俺は人間の駄目っぷり、どうしようもなさ、不条理さをそのまんま投げ出したかのようなコーエン兄弟の映画が好きで、コーエン兄弟といえば『ファーゴ』もその一つであって、この『松ヶ根乱射事件』のジャケットも、田舎が舞台というところも『ファーゴ』じゃねえか、日本の『ファーゴ』なんだろうかと思って、あまり予備知識なしで見た。
そうしたら、やっぱり『ファーゴ』だった。『ファーゴ』の続編かもしれない。過疎ゆえの濃密さをもったどこかの日本の田舎の、どろどろの人間模様がどうしようもなく描かれていた好感を持った。じっさい俺は田舎暮らししらないけれど、ひどくひどくリアルに見えた。それは設定とかそういう部分というよりも、細かい演技とか演出とか、そういったところから積み重ねられているの。双子の兄弟のけんかシーンとか、いつもテレビから流れるNHK(たぶん)とか。まあ、もちろんお話し自体がリアルというわけではないけれど、舞台はかっちりしているように見えた(しかし、こういう映画の舞台として協力する地元、この場合は長野あたりだけれども、それはどういう気持ちなのか)。それで、その上でじわじわと溜め込まれていく不穏さ、緊張感、タイトルで予告された事件への道筋、そして……。
と、いうわけで、えらそうに五段階評価なら三か四といったあたりの当たり作品。ただ、こういうのを見ていてオエっとなってしまう人もいるだろう。露悪趣味みたいなところはあると思う。俺は夢野久作の『いなか、の、じけん』を思い出した。さあ、たとえば夢野のころの「いなか」と九十年代半ばの「いなか」どこが一緒でどこが違うか。この作品にフランシス・マクドーマンドはいたかどうか。
- 『いなか、の、じけん』http://www.aozora.gr.jp/cards/000096/files/919_22031.html
- この映画、知ってる出演者は木村祐一と三浦友和しかおらなんだ。主演の警察官の雰囲気はすごいな。新井浩文って、どっかのチームの元四番みたいな名前だな。新しいチームで何番打つかなんて知らねぇよ。
- 新井浩文、『ジョゼと虎と魚たち』に出演、ジョゼの"息子"の人やん! そしてさらに、『赤目四十八瀧心中未遂』の、あの臓物運んでくる兄さんやないかい! どっちも三番目か四番目か五番目くらいには重要な役や。いやー、俺、人の顔覚えられんわ。そして注目や、こっちの新井さん。
- http://www.tom-tour.co.jp/matsugane/ 「松ヶ根」でググって一番上を確保している大相撲松ヶ根部屋のサイト。表紙ページの集合写真、一番左のお相撲さんが気になる……。