オートミールを食う〜蘇国にては人が食い英国にては馬が食うものなり〜

例のごとく「オートミール」を第一に食う。これは蘇格土蘭（スコットランド）人の常食だ。もっともあっちでは塩を入れて食う、我々は砂糖を入れて食う。麦の御粥（おかゆ）みたようなもので我輩は大好だ。「ジョンソン」の字引には「オートミール」……蘇国にては人が食い英国にては馬が食うものなりとある。しかし今の英国人としては朝食にこれを用いるのが別段例外でもないようだ。英人が馬に近くなったんだろう。

　と、夏目漱石の「倫敦消息」にある。俺はこのところ、毎朝オートミールを食っている。言うまでもない、ダイエットを考えてのことだ。なるほど、俺は毎日走っているし、馬に近づいているのかもしれない。
　オートミール。Мирとは関係ない。このところ、まで一切食べたことがなかったように思う。朝飯を考えるにあたって、以前摂取していた「シリアルにプロテインがけ」（金が無くなってプロテインが買えなくなってやめにしていた）にしようとして、ふと目にとまったのだ。オートミールというものもあるのか。
　オートミール。会社の人に、俺がオートミールを食っているというと、顔を歪めた。子供の頃、父親につきあわされて食べさせられた。見た目がまるで＜censored＞みたいで嫌いだ、云々。なるほど、皿に出してみると人間の食い物に見えぬ。鳥の餌感が強い。これにプロテインをふりかけ、低脂肪牛乳を注いでかき混ぜると、今度は魚の餌のようである。
　が、我輩も大好だ。この餌感がむしろいい。健康にいいという感じがする。昭和の頃にオートミールが流行ったのかどうか知らんが、世のお父さんたちがいったんはまってしまうのもわかるものである。固体とも液体ともわからぬドロドロを流し込んでいくところに、ある種の快楽がある。赤ん坊のころの流動食でも思い出しているのだろうか。
　また、最初から水分を含んでドロドロになるのもいい。シリアルの嫌なところは、最初サクサクのくせに、水分を含むとしなっとなってくるところだ。中途半端で面白くない。その点、オートミールは態度をはっきり示している。おまけに、水分をよく吸うものだから、あまり多く入れなくともふくれあがって腹もふくれる。お得といっていい。
　味についてはようわからぬ。牛乳とヨーグルト味のプロテインの美味と、冷凍のブルーベリー粒の味がする。いずれは粥のようにして食ってみたいとも思うが、朝飯にするには牛乳をかけて食うのがいい。
　これによって痩せたとも痩せそうとも言わん。言わんが、俺は一度習慣にしてしまうと、いつまでもずるずる続けてしまうところがあるし、オートミールがそれほど悪いものとも思えない。少なくとも、ここしばらく俺が毎朝喰っていたものに比べれば相当にマシと言える。
　食事の理想といえば、朝＞昼＞晩と摂取量を減らしていくのがいいという。『Tarzan』誌によれば、それはなかなか難しいので、せめて朝＜昼＞晩にせよとのことである。俺は当面とりあえず骨格筋量の低下を顧みずに、体重と脂肪を減らす方針なので（今のところ、すばらしい体重計はその通りに数値を表している）、摂取カロリー量は相当に抑えている。痩せた上で、筋量を増す。いずれ結果が出たらお伝えするし、出なければ「でぶ」になってしまったのだと思われたい。おしまい。