記憶のない人間とはなにか?……とかどうでもいいか。 『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を [DVD] まずはっきり言っておくが、はっきりいってこの邦題を記憶できない。「雨の中で、復讐の弾丸?」とかなってしまう。どうしたものだろうか。
 というわけで、というかどういうわけでか、記憶を失っていく男の復讐劇である。え、『メメント』? と言われたらそうなのかもしれない。ただ、いずれにせよ記憶もないのに人が人に復讐するというのはどういうことか? というのは興味深いところでもある。まあ、復讐でなく、恩返しでもいいが。記憶を失った鶴が、それでも恩返しにくる。翻案すればなにかできないか。それはともかく、人や鶴というのものは(妙な例を出すから鳥類混じってきた)、その人格、鶴格というものは、そいつの記憶とイコールなのかどうか。
 ……てなことをこの映画を観ていて考え込んでしまうかというと、正直あんまり重要ではないような気がする。ノワールの空気、かっこよすぎてかっこよすぎることはないというガンアクション。それで満腹といっていい。主人公の白人もいいが、中国人三人組のボス格のとくにかっこいいことといったらない。
 それでもって、なんだろうね、笑って死ぬところの美学みたいなところがある。あああ今は亡きもののふの、笑って散ったその心。……って思わず軍歌が出てくる昭和の子なんだけれども、さて、軍歌で歌われる「笑って散った」と、ノワール映画でタバコくわえて不敵な笑みを浮かべて死んでいくそれは同じものだろうか、違うものだろうか。考えたところで答えはわからん。わからんが、俺が想像するに、有史以来のさまざまな戦場でノワール映画みたいに不敵な笑みを浮かべて死んでいった人間も多い。ただ、それは陸軍省が推薦する笑顔とは違うのではないか。わかるだろうか。しかし、結果として兵隊として死んでいくなら同じことなのか?
 ……てなことをこの映画の感想として考えるのが適切かどうかわからん。なにせ公式サイトのURLがjudan-movie.comなのだし(ドメイン名契約切れ後に絨毯屋とかが取得したらいいと思う)、こまけえことはいいから! みてえなところでいいような気もするのだった。おしまい。