期待していたのだけれど『マイ・バック・ページ』


 『松ヶ根乱射事件』の監督が全共闘を描くというのだから必見。……のつもりだったが、みなとみらいのブルクの上映時間と折り合いがつかなかったりしてDVD待ち。が、一転、ニューテアトルでやっているのだからと観に行った。『木洩れ日』と連チャンである。一日に二本の映画を映画館で観るというのは初めての体験であった。
 さて、結論からいえば、ニューテアトルの座席は俺の腰に合わない。痛くなる。それを見越してバンテリンを用意しておいてよかった。そういうところである。そういうところがどういうところかといえば、えらく長く感じた。あまりいい意味でなく。実在事件を元にした当事者の原作をベースにしているせいなのかどうかわからないが、なんというのか、あれもこれもと、なんというか。
 いや、正直なところ、画面を観ていてグッとくるところがあまりなかった。つまり、面白くなかった。
 いや、画面の中に映るセットや小道具など、たぶんかなり精巧に作られていると思う。思うが、なにかこう生々しさがない。妻夫木聡松山ケンイチも演技どうこうでなく、やはりどうも今の子に見えてしまう。いや、当時の子が今の子とまったく違うなんてこともないのだろうが、どうもね。
 なにかこう、自分で期待が大きかっただけに、惜しいという感じが強い。たとえば、「赤邦軍」の情けない実情(ヘルメットに色塗ってる襖一枚向こうでセックスしはじめちゃうシーンは好き)にスポットをあてて、その上で、それでもああいう事件を起こすまで突き進んでしまう集団の狂気やカルト性だとか、あるいは、なんとなく引くに引けなくなっちゃって、みたいな感じだったとか、なんかそのあたりとか。
 あるいは、松山ケンイチの実像について(役名を覚えられない、覚える気がない、調べるのが面倒、という理由で役者の名前をそのまま感想文に使わない方がいいと思う)、最初から明かされていなかったらどうだったとか。うーん、なんかその、ある種病的な虚言癖みたいな、そういう空回りするところはあって、オードリーの春日っぽかったりして、あれはあれでありなんだろうけれども、あー。
 それともあれか、朝日新聞社内での過激派とのつきあいやこの事件とのかかわりについての対立とか、そこにスポットを当てても……ってなにかそれは別のドラマになってしまうか。あと、あの表紙の少女とのやりとりが必要だったのかとか、あの総括を語らせるのが必要だったのかとか。まあ、いろいろ。
 ラストシーンも、まああの子との会話が伏線になってんのだろう。ただ、あれは妻夫木君が何歳なのかパッと見てわからんのが気になった。どのくらい時間が経っているのか、と。でも、『十九歳の地図』の公開年知ってるか、ラジオ中継の広島カープ初優勝から割り出せるか。割り出さなくてもいいか。いや、そのシーンも妻夫木君の演技はいいのだけれども、それまでがなんなので、という気になった。おしまい。


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 ……カポーティの翻訳しか読んでないや。