国民の性欲が第一は自信に満ち溢れていた


 「横浜の人どのくらいいますか」
 会場のうち半分くらいだろうか、手を上げる。
 「あ、手下げないで下さい。DeNAベイスターズのかただけ手あげてください」
 ほとんどの人が手を下げる。
 「もっとがんばりましょう! ちょっと調査してみただけです」
 今季、ベイを血祭りに上げることでCS狙いをしたチームのファンが言っていいことか! と思いながらも、その赤いヘルメットのチームのファンのおれは、やはりひっそりと手を下げた。……思えば小学生のころ、同じような光景を教室で見たことがある。先生が何気なく脱線したのだ。大洋ホエールズのファンはほとんどおらず、巨人ファンばかりだった。カープファンはおれ一人だった。ただ、鎌倉での話だ。鎌倉は横浜ではない。
 まあ、どうでもいい話である。そんなことより、横浜BLITZくるりだ。今日のくるりは(と、生で見るのはたった3回目にすぎないが)自信に満ち溢れていたように感じた。まさに自信作『坩堝の電圧』をひっさげてきた、という感じだ。セットリストなどはとくにここに書き記したりしないが(というか覚えていないが)、ほとんどがニューアルバムからのものだった。あの曲から入るんじゃないかと思ったら入ったし、ラストはあれかと思ったらあれだったりした。せっかくこの構成ということか「ブレーメン」はやったが。
 アンコールでは「シングルカットの曲はやりません」と言って、はじめたのが「惑星づくり」だったりして驚く。そしてまたこれが重厚ですげえなって感じだった。そうだ、重厚で濃密、ビッグバンドみてえだって感じる瞬間が多かったかもしれない。
 ファンファンのトランペットは力強く響き、吹いたと思ったらパッとマイクに口を寄せてコーラスに入る動作とかはエロかっこいい。そして、これまた女性だが、あらきゆうこさんのドラムというのが、なんというのだろうかえれえよかったように思った。むろん、ライブなどろくに行かぬ身ゆえ比較なぞできんが、ともかくそう感じたんだ。しっくりずっしり来ていた。
 男性陣はといえば、岸田繁の「bumblebee」(これよかったな)での妙なダンス、吉田省念のいつかのオダギリジョーみたいな髪形とモモンガ教祖の衣裳、そして……佐藤征史さんは前方にいたお客さんの三角帽子にすっぽり隠れてほとんど見ることができなかった。でも、「jumbo」よかったし……。
 まあ全般によかったとしか言えない。「次で最後の曲です」って言ったとき、冗談かと思うくらいだった。そのくらい時は早く過ぎて、もったいないことにすら感じた。朝のワイドショーで砂像芸術家が採り上げられてたが、あとに残らない芸術という意味では音楽こそが。そりゃ、CDなりMP3でなんども再生できるけど、ライブは再生できない。おれは不慣れなので、その一瞬を捉えたり、自分の中でうまく消化する術を知らない。ニュートリノに通過されてるみたいだ。楽しい瞬間を過ごしていたはずなのに、なにか受け取っていたはずなのに、気づいたら全部流れ去っていたような気になる。率直なところ。
 でも、無駄な抵抗として、こうしていくらか言葉にできる範囲で書き留めてんだ。それでどうなるってわけでもねえが、こうしたいからこうしてんだ。それじゃあ。

 あ、あと、落としたタオル拾ってくれた人、ありがとうございました。

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