おれには映像作品で用いられる技術や、その原理・原則の知識などまったくない。だから「ここはこういう狙いでこっち側からこういう具合に人物が出てきて……」などと語れることはまったくない。ただ、ポケーッと見てて結果として作り手の狙いにフィットすれば「すごくすごいです!」となるし、狙いが逸れれば「いや、あんまり」となるだけだ。
おれはおれについてそれでいいと思っているし、あえて読解力を増そうという気はない。小説や美術についても同じだ。たぶん、あらゆるアートに関して前提知識があったほうがいいというか、いいことが多いのだろうとは思う。ただ、面倒くさいというかきりがないというか、どこまで突き詰めれば? というところで嫌になってしまう。嫌になるくらいなら、季節外れの花火に場違いな拍手をおくってる方がいくぶんマシじゃないか。おれの価値観だ。酸っぱいブドウとも言える。
ただ、アニメについては、たった一つだけ気にして見ていることがある。それは、故・今敏監督が自作『PERFECT BLUE』のコメンタリーかなにかで語っていたことだ。「最初のカット(シーン?)がその作品全体を表している(象徴している? 紹介している?)のだ」と。……って、うろ覚えだから(?)が多くて説得力がねえな。というか、これが自作についての原則なのか、一般的にそうなのか、あるいはそうであるべきなのかとか、そういうところも忘れちまってるし。
まあいい。ともかく、最初になにが映るかだ。それで監督なら監督の意図と言うものが伝わるという。これはなんというか、チェックするに実に簡単だ。覚えやすい。だからおれは、これについてはちょっと気にするようにしている。ちょっとだけ。
そしてようやく、おれは『ビビッドレッド・オペレーション』の話をする。おれは30を過ぎてアニメを見始め、ついには一人でライブまで出かけてペンライト振るところまで行ったわけだが、果たしてそれがすばらしい『ストライクウィッチーズ』のイベントでなければありえなかった話だ。その機会を作ったすばらしい『ストライクウィッチーズ』の監督である高村和宏の新作を見逃すはずはないじゃあないですか。おれは頬をバラ色に染めてその始まりを待ったのだ。「まず、なにが映るんだ?」と。君ら、すばらしい『ストライクウィッチーズ』の始まりがなにを映してきたか覚えているか? 最初に仕掛けてくる可能性は高い!
お、お尻でも女の子でもない! ましてやパンツでもない! スカイツリー(みたいなやつ)と、それをとりまく大都会! ……これは、なんとかエンジンとかいう無尽蔵のエネルギーをどうとかする(先行するラジオがノニとクエ釣りと一人紅白歌合戦ばかりやってるので事前情報ないです)近未来と、それに対する脅威、そこに含まれるであろう文明批判、3.11後の原子力をめぐるなんたらかんたら……? などと、思わず押入れをかき回してアイザック・アシモフの『神々自身』でも引っ張りだそうかという勢いである。そういえば、公式サイトかなんかで、脚本の人がネウ子のあつかいについて監督と仕事と関係なく話し合ったとかいう記事があったような(ちなみにおれ自身はというとSF好きでもあるので、ネウ子方面の話に行ってもよかったかもしれないという思いもある)。つまりは、そういうことか?
と、思いきや、股間から昇る朝日! そこには何かを秘めたる決意を持った面差しの少女!
「わたしは、やらなくちゃいけないの」。この台詞とともに「監督 高村和宏」の文字が浮かぶ。そうなのか! と、ここでおれは膝を打つ。ここに股間督とまで呼ばれる男の静謐にして確固たる決意のほどをも同時に感じざるをえないじゃあないですか。
おそらく、物語は謎のエネルギーと謎の敵をめぐる物語にもなるだろう。敵についても、ネウロイのようにその正体や目的なぞを捨象するわけにいかないかもしれない。しかし、だ。監督はやらなくちゃいけないのである。かわいい女の子を描くこと、こだわりの股間を描くこと……、これをやらなくちゃいけない、そういう決意の表れにほかなるまい。
いやあ、なんとも泣かせる話じゃないですか。もうこれだけで胸いっぱい、お腹いっぱいですよ。クエだって釣ったも同然、太鼓判。この作品に間違いなしと言わざるをえない。
そういうわけで、2クールものに続いて面白そうな新作も多そうでかなり大変な季節ではあるが、なんとか生き残って少女たちの友情を、戦いを見届けなければなるまいと、そう思ったのだ。思ったのだから仕方ない、またいつかペンライト振る日が来ようとも!
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