100円ローソンはおれにごぼうサラダだけ食えというのか!

 ……と、おれの中の海原雄山が怒鳴ったりはしなかった。けど、ごぼうサラダだけじゃさみしいじゃないの、とは思った。
 100円ローソン、深夜。時間も遅く、疲れていたおれは晩飯を買ってすませることにした。おれは100円値引きシールの貼ってあったパスタのようななにかと、ごぼうサラダを手にレジに向かった。
 レジで異変は起こった。
 「すみません、消費期限切れてるからお売りできないんですよ」。
 パスタがレジで撥ねられた。まあ、コンビニで、本当にときどきそういうことはある。値引きシールつきのものだけになおさらだろう。ただ、その店員がレジを離れ、売り場に売り場に行き、新しいのを持ってくる、その急ぎ感に申し訳ないな、と思うばかりだ。
 ……たったのだが、その店員は消費期限切れのパスタのようななにかをカウンターの下に押し込むと、
 「120円になります」
 と言ったのだ。
 え、あれ、いや、ちょっと待ってくれないか。うーん、ごぼうサラダだけ? いや、おれはあんたに売り場に走ってもらいたくはなかったんだけど、けど、そうなのか? それでごぼうサラダだけの清算を済ませたおれは、もう一回りして新しいパスタみたいななにかを持ってレジに来て、なんか照れる。
 「あ、じゃあ新しいの持ってきますんで」
 と、おれはごぼうサラダを手に清算をキャンセルして、値引きシールの貼ってないのを持ってレジに戻ったのだった。
 まえに同ケースでは、レジのおばちゃんが「あら」と言って小走りで走って新しいのを持ってくる、「ほんのちょっと時間過ぎてるんですけどいいですかね?」と言うので「いいっすよ」といったら50円引きしてくれた(最大手チェーン、対応はやり手風の店長)、というのだったけど、さて今回はどうなのだろう。
 おれが「いいっすよ、べつに」とタイミングよく言えたら済んだのか。よくわからない。先の例の後者では店長の対応だったし、なにかしら裏処理みたいな技あってのことだろう。でも、深夜でちょっと不慣れ気味の店員にはそこまでの裁量はないのかもしれない。ただ、かわりの商品を持ってくるというのはマニュアル的のようにも思えるが……と、思ったが、問題は値引きシールだろう。100円値引きシールつきのものと、そうでないもの、この差を100円ローソンで小さいとは言い難い。さらにいえば、この100円の差で刃傷沙汰になるのが横浜市中区である。とりあえずごぼうサラダだけ売って、あとはご自由に、というのが正解には違いない。
 となると、判断を誤ったのはおれの方で、いったん読み取らせた清算をキャンセルさせた方が向こう面倒なことになったのではないか? しかし、もしおれが小さなごぼうサラダだけの清算では小さな袋になるだろう。おれが再びパスタのようななにかを持って現れたら、「一緒に入れてください」というわけにはいかない。かといって、これみよがしに大きな袋に入れるのも妙な話ではある。袋の大きさひとつで刃傷沙汰になるのが横浜市中区某地区である。それに、まとめて買った方が、レシート一枚分の出力が節約されるはずだ。おれはおれでそれほど間違っていなかったかもしれない。
 よかった、間違ってる人はいなかったんだ! ……ということでいいのかどうか。ただ、惜しむらくはダメ元で「お売りできないんですよ」のあとで「あ、いいっすよ、べつに」と言えなかったことか。廃棄食品もったいない。100円もったいない。ただ、すごい速さでカウンターの下にしまわれちゃったからな。
 ……とかまあ、ひどくどうでもいい話で、なんの得にもならないことを我ながら書いたもんだと思う。おしまい。

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