「おまえが生涯で一番好きな映画はなんだ?」ってきかれると困る。でも、おれという人間がどんなやつかを代弁してくれるような映画があるとしたら、『ビッグ・リボウスキ』なんじゃねえかと思う。おれはこんなのが好きな人間なんだぜって履歴書代わりに提出できるんじゃねえかって。久しぶりに観て、あらためてそう思った。
そりゃおれはデュードみてえにホワイト・ロシアン飲んでボウリングして家賃払わねえで、なにしてんだかわかんねえ無職じゃねえんだ。でも、あれに憧れるところがある。58分過ぎから着てるだらしないカーディガンみたなやつねえかと、秋冬シーズンになると古着屋で探したりする。もう酒は飲めねえけど、もうどうでもいいやってなったら、大好きなスコッチか、それともウオッカにカルーア、生クリーム混ぜて飲んでるかもしれねえよ。まあ、ニート時代は真似して飲んでたけど。あるいは、ジョン・グッドマンみてえに変な教条主義的なところとか、暴力的なところもあるし、ブチ切れたりするかもしれねえ。まあ、しかし、スティーブ・ブシェーミみたいな役どころが一番しっくりくるかもしれないな。ひっそりと、目立たず、言葉は遮られ。それとも、ジーザス・クィンターナみてえな変態(でもかっこいい。あと、周辺住民への「告白」のシーンは弁護士に付き添われてるような絵が頭のなかに残ってたけど、捏造記憶だった)かもしれねえ。まあいいんだ、全部ひっくるめて、デュードは死なない、いい言葉じゃねえの。
ああ、飲んだくれの世界、なんか働いてないのに生きてる世界、そんなものがあれば。ブコウスキーよ、『パルプ』よ。どこまでいってもしょうもない夢と酩酊、突然の死。それでも負け犬の死なない世界が続くとすれば、悪い話じゃねえな。まったくそう思うけど、おれはそれでもよ、そんなふうに生きられねえし、そういう世界はやっぱり夢で、それでもしょうもない古着のボウリングシャツ着てさ(夏はだいたいハワイアンシャツとメーカー名の入ったワーキングシャツの古着……ちゃんと本当のアメ公の企業のじゃなきゃ嫌……とボウリングシャツとか着てすごしてる)、できることなら本当にろくでもないところまで生きてみたいもんだ。生き続けてみたいもんだ。ただし、一人で、ひっそりとな。
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……ビッグ・リボウスキの秘書役がフィリップ・シーモア・ホフマンなのな。Wikipediaの髭面みて、「宮崎駿を実写化するならこいつだな」とか思った。
……『パルプ』の映画化はねえのかな、とちょっと思ったり。