アニメ『Wake Up, Girls!』ならびに劇場版『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』の感想

 おれはもとから人の顔と名前を覚えるのが苦手だ。アニメでもそれはかわらない。が、アニメというのは一般の人間に比べると極端な髪の色をしていたり、異様な大きさをしていたり、妙な語尾をつけてくれるので、ありがたいとはいえる。
 そんなおれの「ありがたい」はどうでもいい、という作風のアニメもある。『Wake Up, Girls!』はそんなアニメだった。テレビを観ていても、主要人物のだれがだれだかよくわからぬ。だれがどのような個性の持ち主かよくわからぬ。声質も似ているような気がする。社長はキャラが立っているが、マネージャーはいる必要があるのかどうかもわからぬ。うらの事情はわからぬが素人目に「絵面がひどい」と思うこともあった。いろいろのわからぬが重なって最終回まできてしまった。
 で、その最終回がわりと悪くないのである。これは意外だった。ステージを終えてメンバーがステージ袖に降りてきて泣くところなど、なかなかよいじゃないかと思ったのである。今までの十数話はなんだったのだろうかという感じがしたのである。
 そんな気持ちで、テレビ最終回ののちに劇場版のDVDも見たのである。作品内の時系列でいえば、最初に戻るといったところである。アニメ開始時からいえばマイナス時点ある。前日譚である。
 で、この劇場版、悪くないのである。悪くないというより、むしろちょっといいくらいじゃないか、という感じなのである。そしておれは強烈に思うのである。この劇場版をアニメ放送前になぜテレビ放送しなかったのか、と。というか、アニメのスタートが普通にこれでよかったんじゃないのか、と。そうすれば、ひょっとしたら、最終回に至るまでの道中ももうちょっと楽しめたんじゃないのか、と。メディア戦略の事情などはわからぬが、そんなふうに思ってしまったのである。作品世界のことについてもっとなにか感じるのが本道であろうが、作品世界外に思いがいってしまったのである。アイドルとはなにか、アイドルアニメとはなにかなど、むつかしいところまで考えられぬ。
 というわけで、なにかこう、『Wake Up, Girls!』について、おれは妙な気持ちを抱いているわけである。アニメはたしかになにかこう、ひどいといえばひどいところも多かった……が、まあ結局ぜんぶ観たのだが……先に劇場版を観ていれば、なにか変わったのだろうか。時は遡れぬ。確かめようはない。さらにいえば、劇場版公開時に「観てみよう」と全く思わなかったのも確かなのである。そしてまた、言ってしまうと、とくに好きなキャラはこの子、というのもないのである。そこまで強烈なインパクトはないのである。
 しかして、なにゆえこう締りのない感想を書いているのかというのもよくわからぬ。よくわからぬが、なにか最終回と劇場版で引っかき傷をつけられたな、という印象なのである。それも、もやっとした印象であって、「明日はどっちだ?」と言われても困る、そういうものである。そういうものであるが、あるいはひょっとすると、なにかおれ好みの要素があったのかもしれない。しかし、それを「これこれこういうところだ」と取り出すこともできないし、なにかの気まぐれかもしれない。「劇場版を先に観るべきだ」とは思うが、そこに「!」を付けてまで人に勧めようという気も……あまり起こらない程度だが、しかし。