マイナンバーが来た!……と報告するのは禁止されてないよな? pic.twitter.com/oUl3tE1VqU
— 黄金頭 (@goldhead) 2015, 11月 22
部屋着用のジャージを着てぼんやりインターネットしていたら、ドアをノックするような音が聞こえた。「ような」というのは、おれの安アパートでは隣や上のドアをノックしても、同じように響いてくる可能性があるからだ。とはいえ、なにか確信めいたものがあったので、ドアの方に言って電気をつける。ガサゴソ外から音が聴こえる。鍵を回すと、「郵便局です」という。マイナンバーが来た。間違いない、と思う。おれはあらゆる通販の送り先を会社にしているので、うちに来るといったらこれくらいしか考えられなかった。
そして結果は、まさしくそうだった。沢山の封筒を抱えた中年の(おれも中年だが)郵便局員が立っていた。
「ハンコいりますか?」
「お願いします」
実際にはそうではなかったのだが、郵便局員は汗をハンカチで拭きながら一軒一軒いろいろの家や部屋を回っているような感じだった。おれは靴箱の上に置いてあるプラスチックのカゴからハンコを……、ハンコがない。広告だの郵便物だの適当に置く癖があって、肝心の認印に使ってるやつが出てこない。これはしょうがない、ちゃんとしたやつを持ってくるかと踵を返し、「ちょっと待って下さい」と言ったら、「サインで結構ですので!」と言う。
おれはクソ汚い字で(わざとではないよ)自分の名前を書く。自分の名前をボールペンで書くのは今日二度目だな、と思う。そしておれはマイナンバー通知の封書を受け取った。再配達だのなんだのの手間が省けてよかった。「ご苦労様です」といってドアを閉める。
と、外から話し声が聞こえてきた。郵便局員の声だけが断片的に聞こえてきた。
「……担当地域が……それは私にもわからないんですよ」
このアパートの住人かどうかわからないが、だれかに「自分のマイナンバーはまだか」と問われたようだった。まあ、マイナンバー、他人のナンバーは知ったはなしじゃあない。
して、おれは早速ツイートした。現代人の病気である。その後、ご開帳である。果たしてどんなナンバーなのか? ラッキーセブンだったり、すごくキリがよかったり、あるいはものすごく縁起が悪かったりしたら、いけないことと知りつつそれもツイートしちゃうぞ、という心持ちである。
が、おれのマイナンバーはしごくつまらない数字だった。ラマヌジャンだったら「それは素数同士が……」とかいって珍しい数字であると言うかもしれないが、おれは算数が苦手なのでそういうのも思いつかない。高卒文系の意地で無理やりなんかの単語にならないか考えてみても思いつかぬ。なんともつまらない。
マイナンバー制度はなんともつまらない。おれには学もなければ高い意識もないので、その意義だの異議だのさっぱりわからぬが、つまらん数字が出てきておしまいではまるで面白くない。
そこでどうだ、たとえば下四桁が後日発表される数字と一緒だったら一万円もらえるとか、全部一致したら十億円とかだ。一回こっきりじゃなくたっていい。一年に一度抽選があるとかどうだ。なんか楽しいじゃないの。そうすれば国民だって「マイナンバーいいね!」ってなるに違いない。なんとなく今、「マイナンバーよくわかんないよね」、「マイナンバー感じ悪いよね」の方が優勢のようなので。
……って、「国民」がおれと同レベルというのは侮辱ですかね、はい。この件に関しては以上。あ、無料でもらえるという個人番号カードとかいうのは作ってみようかね。なにせスマホで写真撮って、QRコードからひょいひょいっとできるらしいし。しらん間に世の中進んでるんだね。今度こそ、以上。