「コミックキューン」はおれのために作られてはいなかったようだ

 おれの立ち寄るコンビニに、ハイソなセブンイレブンがある。雑誌棚にエロ本がない。エロ本どころか、最低限許されるのは「週刊文春」、「週刊新潮」までですよ、という具合である。なにやらビジネスだとかスポーツだとかの雑誌が並ぶばかりである。地味で小さな雑誌棚である。
 が、その中に場違いともいえるような表紙が見えた。こういってはなんだが、硬派な雑誌に囲まれたそれはエロ漫画雑誌の表紙に見えた。おれは思わず手に取った。表紙にはこう書いてあった。
「あなたのために作った、新しい4コマ誌」
 おれのためにか、と思った。というか、手に取ってしまった時点でなにやら無性に恥ずかしくなって、棚に戻せなくなってしまった。おれはこの雑誌を買うことにした。東スポと一緒にレジに出した。
 して、「コミックキューン」はおれのための雑誌だったか。答えは二つある。一つはまったくその通りだ、ということだ。この雑誌には(おそらく)萌え四コマというものが詰まっていて、そのほとんどが可愛い女の子ばかり出てくるものだったのである。ハーレムはノーサンキュー、女の子がキャッキャウフフしてるアニメばかりを好むおれのための漫画誌といっていい。「おれのため」だ。悪くない。
 が、もう一つの答えは「おれ向きではなかった」ということになろうか。「しょせん漫画雑誌、540円も出して、すぐに読み終わってしまう……」と思っていたのと相反して、読み終わるまでに3夜はかかった。4夜かもしれない。つまらなくて読んでいられないというのではない。が、なにかこう、似たような……型、フォーマットというのか……に当てはめられた漫画がこれでもか、これでもかと出てきて、正直なところ疲れてしまう、読み続けることができない。「おれのため」過ぎたとでも言おうか、漫画を読むのにこんなに時間がかかったというのは、なかなか記憶にない。ちょっと不思議な体験だったとすら言える。
 さあ、そして、この中からなにかがアニメ化されたりするのだろう。おれは漫画雑誌を買わず無料のアニメばかり見ているが、こういう土壌があって、すさまじい競争があって、そしてアニメになるのだろう。いやはや。なにかこう……こういう世界もあるのか、と思った。そんな読書体験であった。
 ……しかしなんであの雑誌棚のラインナップにこれが入っていたのだろうか。よくわからない。