ノワールなめんな ロバート・クーヴァー『ノワール』

ノワール

ノワール

誰もが汽車に乗っていて、誰一人オリジナルなキャラクターなどいない。何かに憑かれるというのは、昔ながらのメロドラマで闇雲に役を演じるようなものだ――ほかの者たちはみな、幸運な者たちでも、よくて端役である。したがって、君が囚われているのは物語ではない。ほかのすべての人と同様、物語に気づいたうえで、それをいかに演じきるかなのだ。

 ロバート・クーヴァーといえばパロディの名手にして、ポストモダン文学の大御所だということだが、本書を読んで思ったのは「ノワールなめんな」という一言であった。はっきり言ってつまらん。読み進めれば読み進めるほど、一回にめくるページの量が減っていく。途中で放り出してもいいくらいだ。どんでん返しがあるかないかといえばあるのだが、あったところでどうだって話である。なにがパロディか。ノワールのパロディか。ノワールといえばお前、偉大なるジェイムズ・エルロイ深町秋生のレベルに達してみなければならない。少なくとも、その模倣を登場人物たちに演じさせなければいけない。ところがどうだ、こいつは「ノワール」を名乗りながら、甘っちょろい、退屈な、しょうもない代物だ。「ハードボイルド」ということにしても、村上春樹の最高傑作じゃあないかと思う『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』をぶち抜かなきゃならない。そいつができてねえ。ポストなんちゃらの要素をふりかけたらジャンル小説くらい名作になって崇められんだろ、みてえに思ってねえか。そうはうまくいってねえよ。すばらしい映画『ビッグ・リボウスキ』を小説にしたらこんなんかと思ったりするが、あれは映画だからいいんだよ、ブシェーミがいいんだよ。あるいは、ダメ主人公を描こうってんなら、ケイアイすべきチャールズ・ブコウスキーの『パルプ』をぶち抜かなきゃならねえんだ。そこんとこわかってんのか。まだブローティガンジャンル小説に手を出してみました、ってやつのほうがマシだ。いや、わかってねえのはおれか。おれの読解力や感受性、なにより知性が足りないからポストなんちゃらがわからんのか? それならそれでいい。『ユニヴァーサル野球協会』はよかったが、『ノワール』はつまんなかったぜ。二人称小説としても、ジェイ・マキナニー『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』よりつまんねえぜ。それだけ言っておくぜ。それでもっておれは、今後ロバート・クーヴァー読むこともねえだろうって言っておくぜ。おしまいだ。
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パルプ (新潮文庫)

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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

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ユニヴァーサル野球協会 (白水Uブックス)

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