佐藤泰志三部作、とされているらしい三作目。映画館で観たかったが、逃してしまった。主演はオダギリジョーに蒼井優。……あんまり話題になってなかったかな。ああ、そのあたりが佐藤泰志なのか? よくわからない。ところでおれは佐藤泰志は全部読んだような気になっていたが、この『オーバー・フェンス』は読んだ覚えがない。似たような作品が多いから読んだのに忘れたのか、読み忘れているのか。
舞台はたぶん函館。職業訓練校(大工)に通うバツイチのオダギリジョー。どことなく刑務所のよう。昼は動物園、夜は夜の女蒼井優。原作著者の職業体験校時代のことを元にしている部分もあるのだろう。地味な話といえばそれまでだ。それまでだが、地味な人生の敗残者を演じるオダギリジョーはよかったし、ガチョウの求愛行動を真似する蒼井優もすごかった。あの求愛行動の真似はタモリの前でやってほしいと思った。べつに人類はタモリを喜ばせるために存在するわけじゃあないのだけれど。
というわけで、なにかいい感じだけど、なにか突き抜けるところのない佐藤泰志原作作品、というところではあった。というか、『海炭市叙景』と『そこのみにて光輝く』に比べると、一歩劣るかな、という感じがした。ああ、そのもどかしさが佐藤泰志らしさ。けど、三部作とかいわず、移動動物園ものとか、ちょくちょく映画化していってくれよ。なにせ、佐藤泰志の新作小説は読めないんだから……。
<°)))彡<°)))彡<°)))彡<°)))彡