ZOZOスーツ、なにこれ、これが近未来かよ、悪くねえ。

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おれはわりとはやくZOZOスーツを申し込んだ。スーツを装着してボタンを押せば、おれという身体を精確に測定してくれる。なあ、これは近未来じゃないか、SFじゃないか。おれはかなり色めきだった。街を歩いていても、銀色のつなぎを着て、エアカーで空を飛んでいる人間なんかいやしない。そんなのはおれの望んでいた21世紀ではなかった。だが、ZOZOスーツはそこに一歩近づく、そんなガジェットのように思えたのだ。

が、知っての通り仕様変更である。これにはガクッときた。ボタン一発というところがよかったのに、だ。「新方式のほうがより精確なのである」と言われたところで、「いや、そこじゃなくて」というような気持ちだ。ボタン一発→「なんだかわからんがすごい!」。全身の白丸をカメラが読み取る→「なんか仕組みがわかる……」。そんな落胆だ。いや、一般に普及している携帯端末でそこまでできるのは十分に近未来なはずなのだが。

して、いよいよZOZO SUITが届けられたわけなのである。「遅れるよ」という予告があって、さらに「また遅れるよ」という予告があり、ようやく届いたのである。

で、人間、水玉の近未来風つなぎを前にしてどうしたらいいのか。これは全裸の上に着用するのか? いや、衣服用採寸なのだから、シャツとパンツは履いておくべきだろう。と、その前にアプリをダウンロードするのだな……と、そこで気づいたが、このスーツ用のアプリというのは存在せずZOZOのアプリに機能が組み込まれてるのね。

と、ここで話が逸れるが、おれはとっくにZOZOのアプリなどインストール済みなのである。おれは古着が好きだ。実店舗でもいいが、ネット通販はなおさらいい。なんかこう、ふとアクセスして、好きなブランドが安かったり、奇抜なデザインのものが安かったりすると、ついついポチッとやってしまう。おれにはファッションのことはよくわからぬが、服が好きなのは確かだろう。貧乏人の慎ましやかな生活のわりに、部屋の結構な部分を服が食ってる。着なければ売るなり捨てるなりすればいいのだろうが、なんとなく「二軍落ちだ」とか「三軍だ」とか増える一方である。ZOZOというよりソフトバンクホークスのようだ。言うまでもないが、一軍とてしょうもない古着なのであるが。あ、あと、いくつかの古着ショップの中でZOZOをよく使うようになったのは、商品画面で「前にお前が買ったこの服の寸法はこんなんだよ」って比較できるから。有能。

閑話休題。ZOZOのアプリの右下から測定モードに。ああしろ、こうしろと説明が始まる。「ちゃんと聞こえてるか確認するぞ?」とか言われて数字を押したりする(ここで気づいたが、耳の不自由な人はこのアプリ使えんね)。でもって本番。机の高さはちょうど70cm。その上にiPhone SEをセットする。そこから2m……と、「もう少し前に出てください」。はいはい。「もう少し下がってください」。はいはい。

で、さらに12時正面、次に11時の方向を向け、さらに1時の方向を向けと言われてテスト終了。ここからが本番。ぐるりと12時間の旅となる。なかなか面倒でしょ? でもね、少し楽しい。携帯端末の音声の言うがままに水玉のつなぎ着て一人で撮影されてんの。なにこれ、これが近未来かよ、悪くねえ。すごく滑稽だ。だれかに見られたら死ぬ。

でもって、一周、おつかれさん。「携帯端末を持って測定結果をチェックしてください」言う。携帯を持つ。と、画面が「音声ガイド中」みたいなままだ。結果が表示されない。「?」。戻るボタンだかなんだかを押してみる。と、アプリの「その他」画面に戻ってしまう。どこにも測定結果らしきものは見当たらない。……失敗!

また、一からか? 一から始めるのか? 始めたよ。また手順の動画から始まり、一括スキップできず、次へボタンを激しく連打していたら……今度はアプリが落ちた。

正直、もうやめようかと思った。が、冷静に自分の姿を見る。水玉模様のつなぎを着ている。おれは草間彌生ではない。これを脱いで、またいつかやろうという気になるだろうか? 草間彌生なら諦めないね。

再チャレンジ。また、3時間と12時間の旅(比喩だからね、念の為)。終了。そして、今度は「音声ガイド中」みたいな画面をしばらく眺める。と、出てきたじゃないか、測定結果! フレーム人間! 各部位の数値! じゃーん、これがおれの体格……って、公開するわけねえだろ。だれかに見られたら恥ずかしくて死ぬ。

いや、しかし、これがどれだけ精確なのかわかりはしない。というのも、腕の長さが左右で5cmも違うと出たのだ。そんなに違わんだろ。いや、たしか大昔、学校の制服をつくるときに左右で違うと言われたような気がしないでもないが5cmも違ったかな。

ああ、でもなあ、このウエストなあ。これは正しいような気がする。というか、これから目をそらしてはならない。一時期、拒食症クラス(というか医者に「摂食障害」と言われたんだけど)のダイエットを成功させて(勤め先のビルの上に住んでいるよく知らないおばさんから「大病かと思っていた」とか言われた)、28インチとか29インチのジーンズ安く買ってた(細いのは良さげなものでも安いことが多いように思えた)ときがなつかしい……。

というわけで、走るか。酒を飲まない、飯は食わない、そして走る。これで痩せる。これ以外のダイエットはまがい物だ。つーか、このスーツ、ダイエットやボディビルディング用品として優れてね? いや、精度の問題はわからんけど、体重だけではわからないなにかがある。

それはそうと、目論見通りなんだろうけど、この数値でピッタリとかいうデニム注文しちゃったし、太ってからのサイズのパンツ何着も買っちゃってるしな。まあ、どうでもいいか。とりあえず、本当にフィットする服の着心地が既成品とは違うのか、届くのが楽しみではある。

あと、ZOZOのアプリ落ちすぎなんで、なんとかしてください。でも、このZOZOSUITは面白いので、ZOZOで買い物せんでもやってみる価値はあると思う。あんたも機械音声に操られてぐるぐる回れ。以上。

http://zozo.jp/zozosuit/