穂村弘『もしもし、運命の人ですか。』を読む

 

また穂村弘の本を読んだ。穂村弘の本ばかり読んでいる。いや、ほかの本も読んでいる。しかし、すっきりと読み終えられるのは穂村弘の本ばかりなのである。

本書は、おもに恋愛について取り扱っている。恋愛についての本である。

 NGワードがあるように、行動のNGというものも存在する。

 以前にも書いたことがあるが、私はグラスのなどの底に必ず一センチほどの飲み物を残す、という理由でふられたことがある。

 「どうして、きちんと飲めないの、いつもいつも、ちょっとだけ残して!」

 そう叫んで席を立った彼女は、二度と私の元に戻って来なかった。

こんなことを書く著者は、一見恋愛弱者のように振る舞う。振る舞うが、「あれ、やっぱりこのひと、モテるんじゃ」と思わせる記述も多い。というか、モテるだろ、短歌で名声をなすような人は。本人が書くことはないが、芸術家だ。その証拠に、この本ではそういう分野らしいエキセントリックな恋愛体験が語られたりもしている。

恋愛体験。「そういう男がモテるんだろうな」というような推測はあっても、主語は小さい。あくまで著者の体験がもとである。そのいじらしさに、感じ入るところはある。感じやすさに、意識しすぎなところに同調してしまうところもある。けど、やっぱり恋愛に強いよな、穂村弘

とはいえ、これが2021年の今現在の恋愛に適用できるだろうか……などとも考えてしまう。ジェンダーの問題、パワハラモラハラの問題。現代において、恋愛について語ることは難しい。

が、穂村弘はその繊細な感覚によって、「前時代的な女性観!」みたいな批判を受けることもないのではないのか。そのように思う。額に相手への好感度、世間一般の人への平均的な高感度、そして性欲が数値化されて表示されればいいのに、なんてのは、今どき、未来どきな感じすらする。

と、書いておいてなんだけれど、こういうふうに恋愛を、男女間の恋愛を語れるのも一昔前かな、などと思う。おれが現代のモラルに、PCに圧迫されているのかもしれないが。そのあたりは、読んでみて判断してみてください。

え、おれ、おれの恋愛? おれはモテるのか? まあそれについてはノーコメント。でも、女の人に嫌われないこともある、とだけは言っておく。まあ、この顔、この性格、この知能、この身長のわりにはよくやってるんじゃないか、みたいな気はする。そんな気がしているだけだから、大目に見てやってくれ。それじゃ。