今こそカープの捕手について語ろう

カープの捕手の話をする。

おれが物心ついたころの正捕手は達川光男だった。カープの捕手といえば達川、というイメージだ。幼少期の記憶は強い。とはいえ、ファミスタで打率の低い達川が、キャッチャーとしていかに優れていたかはわかっていたかどうか（後年、解説者として、「当時の捕手は自分の身長くらい打率があればよかった」とか言っていたような気がする）。リードの上手さなどがわかる年齢ではない。ただ、ベストナインなどに選ばれていたし、父が「達川はすごい」というので、すごいと思っていた。あと、「珍プレー大賞」常連で、カープの選手に注目が集まっているのもうれしかった。

次に来るのは西山秀二、瀬戸輝信の西山・瀬戸時代だ。厳密には正捕手は西山だったのだろうし、成績的にもそうだろうが、瀬戸も忘れがたい存在だ。なぜかおれと弟との間では「パスボールをワイルドピッチに見せかけるのがうまい捕手」という位置づけになっていて、パスボールをするたびに喜んだものだった。しかし、やはり西山の時代か。西山はけっこう打った。そして、その捕手的体型のわりには脚が速かった。意外に、速かったのだ、西山は。

さて、その次に長い時代を築くのが石原慶幸である。西山・瀬戸のように石原・倉義和時代といえなくもないだろうが、やはり正捕手といえば石原だろう。おぼろげな記憶ながら、ノムさんが高く評価していて、「すげえぞ石原」と思ったような気がする。そんかこともあって、おれの中で石原はあくまで守って打っての正統派の捕手である。が、検索などして出てくるのは「インチキ」というニックネームであり、「一握の砂」事件ということになる。先日J SPORTS オンデマンドの解説者が石川雄洋で、視聴者からの質問メールで「一握の砂」について語っていたくらい、語り継がれている話である。ちなみに、石川がなんと言ったかよく聞いてなかった。それにしても、J SPORTSのDJケチャップの中継は非常におもしろい。金村義明や森繁和と野球話に花が咲くなか、試合が勝手に展開していく。まあいい、石原である。通常の野球中継で野村謙二郎と石原慶幸という組み合わせの解説があるのだが、そのさいに野村が石原を呼ぶのに「石原さん」と言うのがなんとなくおかしい。そりゃ大先輩だからって呼び捨てにはできないだろうし、「石原くん」というのも変だ。その石原、自分の中では衰えて引退したというイメージはあまりない。

その石原の次となると會澤翼だ。顔が前田智徳に似ているのが関係あるのか知らないが、よく打つ。打てる捕手、という感じである。ここ一番で強い、というイメージもある。選手会長など、グラウンドの外でもリーダーシップを発揮するタイプだ。

が、その會澤翼が2022年の現在になって調子を落としている。まだ衰える歳ではないし、怪我などの影響もあるがさてどうしよう。

……と、なったとき捕手の大渋滞を起こしているのが現在のカープである。打撃一番となると坂倉将吾を置いて他にはいないが、「サードがいない」という理由でサードを任され、これをまた器用にこなしてしまうので、なにかもうサードに固定されつつある。ファーストもやる。でも、本人はあくまで捕手志望。しかし、「サードがいない」。そこでベテランの域に達しつつある磯村嘉孝もいる。顎が長く、パンチ力もある捕手だ。ただ、もうちょっと打ってもいいような、というイメージもある。ならば若手となれば、背番号22を背負うドラ一の中村奨成という線もあるが、こちらもまだまだ甲子園を湧かせた打力が発揮されているともいえず、さらには外野手挑戦などあやふやだ。では、一瞬ブレイクしかけた石原……石原貴規もいるはずなのだが、あまり出てこない。

というわけで、會澤の次、というのが見えてこないのが現状である。それにしてもなんだ、今年のカープの捕手は、みんな全然盗塁を刺せない。エラーも目立つ。育成から上がってきた持丸泰輝でもだれでもいいが、會澤不調のチャンスをものにする選手が出てきてほしいものだが……。サードに林あたりが台頭してきて、坂倉が超打てる捕手として固定できたりしたらいいのだろうが、リードとかそのあたりの話もあるだろうし、そのあたり話が広がるのでこのあたりで。

え、「森伊蔵を飲んだのは私です」事件の木村一喜は？　「鈴　衛　残　留」で知られる鈴衛佑規は？　現在プロ19年目を迎える頼れる2軍のリーダー白濱裕太は？　まあ、いろいろあるけど、ええことよ。