あるべき場所に証明写真機がなかった話

先日、免許更新の時期を知らせるはがきが届いた。おれは免許を更新しなくてはならない。そのために、度数を上げたメガネすら作った。身分証明書としての運転免許証。おれは車を持つことも、運転することももはやないだろうが、便利な身分証明証として運転免許は必要だ。

運転免許の更新には写真も必要だ。証明写真だ。証明写真機、証明写真ボックスで撮ればいい。おれは今日、会社の帰り、石川町の証明写真機で証明写真を撮ろうと思った。数日続いた抑うつとか過労で顔はへたっているが、それはおれの証なのでしょうがない。悪い目つきにピアス三つ。これがおれの顔だ。

……などと思って石川町駅。ねえんだよ、証明写真のマシーンが。いくら探してもねえ。いくら探すくらいの広さでもないが、ねえんだ。石川町駅の中華街口。いや、あったよな。毎日とはいわないが、相当通り過ぎている駅だ。絶対にあったはずだ。というか、あるよな。あるんだよ。絶対にある。でも、ねえんだよ。みずほ銀行のATMしかねえ。なんだこれ。おかしいだろ。

そうなったおれの頭の中には山崎まさよしの「One more time,One more chance」が流れてきたわけだが、「こんなところにいるはずもないのに」じゃないんだよ。

 

山崎まさよし / One more time,One more chance - YouTube

 

あるはずなんだよ。まったくおかしい。あったろう? あったよな? あと、寿町というか松影町の交差点の近くにもあったよな? でも、あそこは、撮影中にバッグや上着を盗まれそうで怖いんだ。いや、ともかく、あるはずのものがない、これに衝撃を受けた。

そうなって、ふらふらと歩いて帰るおれには、夜の街角に光る自動販売機も、コインパーキングの光も、ぜんぶ証明写真機に見えて、でも、それはそうじゃなくて、でも、その光はぜんぶ証明写真機だったような気がして、わけがわからなくなった。まったく、頭がおかしくなった。もとからおかしい頭が、さらにおかしくなった。

というわけで、おれはいつでも写真証明機を探してしまうことになってしまった。いや、わかっているんだ。関内駅にも、おれの通う精神科の近くにもあることを。たしかに、たしかにあるんだ、ないはずがない。あるんだ。あるに決まっている……。最悪、桜木町には。