承前。
最速の予約で大学病院行った。9時からの予約で、病院が開くのが8時なので開店前に並ぶくらいのことを考えていたが、なんか出遅れて8時半くらいになった。
すごく待つことを予想していたが、そうでもなかった。
担当の医師の部屋に入る。
開口一番、「若いな」と言われる。
あらかじめ渡されていた年齢からの印象だろうが、いや、あなたのほうが若いのでは? ん、よくわからんな。わからないが、あとから調べたら内視鏡部の部長だった。なんであれ、いきなり「若いな」と言われて面食らう。
それはともかく、若く見えるヒラサワ部長先生、おれが持っていった「御侍史」の紹介状を見ながら、こんなことを言う。「あれ? 写真とかなかったですか?」、「いえ、それがもらった紹介状のすべてです」。「ウシクボ先生たまにやるんだよな……」。
なんと、念入りすぎる検査をしたのに、せっかくの検査結果を渡さなきゃあかんやんか。
「あ、でも、自分が渡された写真ならあります!」と、バッグをがさごそ。あった。今回の内視鏡検査関係書類一式、クリアファイルに突っ込んで持ち歩いていたのだ。カバン整理できない勢の優勝である。
が、医師、ポリープの写真を見て表情が変わった……、ような気がした。病理検査の文面と見比べながら、「ああ、これ、これはね、うーん」。
説明はこんなものだった。もちろん、おれの理解を超えているので、おれが聞き取っただけのことだ。口調は再現できないのでしない。
「病理検査の結果と写真を見るに、これはおそらく、がんとは違うものである。なんとかの略でNETと呼ばれる。もしもこのポリープにあらわれたものが、がん単体であれば切除できる。NET単体でも切除できる。ただし、稀に両者が両方混じっているような場合がある。その場合の予後は良くない」。
おれの中のどのような楽観性をもっても、その場合は「予後不良」と聞こえた。あれ、死ぬのかと思った。家族はいるのか、親はどこに住んでいるのかなどを聞かれる。そして、住んでいるところは病院から近いのか、休みは取れるのかと矢継ぎ早に聞かれる。家は近い。歩いてきた。小さい会社なので人が休むのはよくないが、おれのがんより優先する仕事はない。「家近いっすよ。会社も近いし、仕事も休めます」。
すると、すぐに医師は病院内のどこかへ電話して、いろいろな検査の予約をねじ込んでいるように見えた。明後日の大腸内視鏡検査が決まった。さらに、3泊4日の入院、手術が必要になるだろうという。今日も検査のフルコースになった。
なんでも、がんにしてはまだ若い方だし(見た目も若いがな)、進行や転移が早いとよくないから、すげえスピードでやるという話になったのだ。あかんやんか。ええやんか。
診察は終わった。やはりさすがに予後が良くない、死ぬのかというとビビるものではある。検査の合間などに検索してみる。
神経内分泌腫瘍(NET/NEC)①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/81/5/81_931/_pdf
消化器神経内分泌腫瘍(NET),神経内分泌癌,オクトレオチドシンチグラフィ,オクトレオスキャン[長崎
「あきらめちゃいけない」などと言われると、逆に「あきらめるのが普通の状況なのか」となってしまう。人間の心はセンシティブなのだ。
それはそうと、気になったのはpdfのやつである。『NET G2 と腺癌が混在した直腸 MiNEN の1例』。むろん、内容はわからない。わからないが、「ネットと腺癌が混在」というあたりが、さっき聴いた話とぴったりくるような気がした。MiNENならみんな予後不良というわけではなく、これも悪性度が低くて助かったケースのようだし。
まあ、それは先の話だ。とりあえず今日は検査でいっぱいだ。

1階中央採血室で採血→1階10番でモビプレップなどの受け取り→4階生理機能検査室で心電図→4階放射線部でレントゲンとCT。このうちCTは先ほどの診察室から予約をとった形になっていた。
思っていたより待つことはなかった。CTの時刻が12:00と決まっていたが、ずいぶん時間があまって、音のないメジャーリーグ中継など遠目に見ていた。大谷はまった打ったみたいだ。
まあしかし、CTくらいは今日やるんじゃないかと思っていたので、想定はしていた。でも、想定していなかったのは、CTの造影剤って、なんかバリウムのイメージか、飲むものだと思っていたのだ。点滴とは聞いていない。でも、採血もこの注射もさすがの腕前でぜんぜん痛くなかったし、小学生のときの扁桃腺の手術以来の点滴も平気だった。
しかしまあ、CTスキャンは事前にChatGPTから聞いていたとおりだった。
体験:台に寝て「息吸って~止めて~」ってやつ。造影剤を入れると体がカーッと熱くなって、下半身がオシッコ漏れた感じになる(漏れてはいない)。
体というか、本当に下半身が熱くなって、漏れた感じになる。この記述を読んでいなかったら、「漏らしたか?」と思っても不思議ではない。とはいえ、あんなふうに内臓が熱くなるのは不思議な感じだ。ものすごく強い酒を飲んだみたいな。だれか娯楽用造影剤バーとか作ってくれないか。
……まあいい、もはやおれは検査の、そして手術のベルトコンベアーに乗ってしまった。明後日はふたたびの大腸内視鏡だ。そこでチョキンと切って終わりになるかはわからない。終わらなかったらおれの命の生命は死んで死亡する。それだけのことといえば、そうなのだろう。そんなおれにものを贈るチャンスはもう少ないかもしれない。後悔しないうちに贈ったほうがいいだろう。以上。


……と、また今日もお見舞いいただきました。マッカランは「良きときにお飲みください」とのことですので、一連の病院通いが終わったら飲みます。白米は白米が高いときにありがたいし、白米は大腸内視鏡検査の前にも食べていいのです(ふりかけはだめなので、めんつゆ垂らして食べるといい)。
