はてな横浜オフ会顛末

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「焼き鳥半額んなってたよぉー」

参加者の一人がプラスチックのパックに入った焼き鳥を山ほど食品館あおばのビニール袋から取り出す。

「それじゃ乾杯といきますか」

参加者おのおのにタカラの缶チューハイが行き渡る。一人の参加者が、「おりゃあ缶から直接飲まねえんだ。そういう主義なの!」といって、道端で拾ってきたと思しきセブンイレブンのコーヒーカップにチューハイを注ぐ。準備はできた。

「プリントアウトー!」

缶と缶がおざなりの音を出すか出さないかしてぶつかり合う。みなアルコールを喉に流し込む。何ヶ月ぶり、いや、何年ぶりかの酒というものもいただろう。酔いはすぐにまわる。半額の焼き鳥もすぐになくなってしまう。だが、パークスクエアの植え込みの前から、もう一度食品館あおばに買い出しに行くものはいなかった。だれももうなにも買う金なんてなかった。

それでお互い、昔話に花を咲かせる。今やだれも通信機器なんていうものは持っていなかったし、インターネットにアクセスできるものもいなかった。すべては過去の話だった。

「いい自転車乗ってきたねえ」

空き缶を満載した自転車を指さして一人の参加者が言う。

「そ、そうだろ、こ、コルナゴのエースっつーんだよぉ」

そのコルナゴには、空き缶でいっぱいになったゴミ袋のほか、すばらしいストライクウィッチーズのフィギュアが13体貼り付けられていた。その持ち主は自転車のヘルメットのかわりに金魚鉢を頭にかぶっていた。

「む、むかしは、これで、あっち、こっち、い、いったもんだよぉ。に、日本中よぉ。カメラなぁ、カメラ持ってたんだよぉ、一眼のなあ、そ、ソニーって会社あったろぅ? ソニーのカメラよぉ……」

だれがどこから持ってきたのか、何が入っているのかもわからない2リットルのペットボトル焼酎を持ち出す。宴はますます盛り上がる。

と、そこにパークスクエアの警備員がやってきて、「こんなところで酒盛りをされては困ります」などという。まるでホームレスを見るような目つき。「おお、おれたちを、なんだと思ってんだ! え、エリートのは、はてな……」言うか言わないか、はてなのエリートたちは駅前からつまみ出されていた。

横浜の中心地である寿町に放り出された面々。ぽかんと口開けてるやつ、ぶつぶつなにか言ってるやつ……。

「走る、走るんだよ! まだ、おれたち、走る!」

一人の参加者がそう叫んだ。「異議なーし!」の合唱。そしてオフ会のメンバーたちは走りだした。とはいっても、片足を引きずってるやつもいたし、片目しか見えないのでラブホテル街の方に一人で突っ込んでいったやつもいた。

気づいたら、一同は橋の上にいた。下に流れるのは中村川だった。

「この川の下には、わいせつなすばらしい世界がある!」

「違いない!」

一人、また一人とはてなオフ会のメンバーたちは飛び込んでいった。

……後日、一人の遺体が打ち上げられていているのを地元住民が見つけた。水を含んでパンパンに膨れ上がった骸だった。住民たちは後世に仇をなすことないように、お地蔵様をたてて奉った。今では濡れ地蔵と呼ばれるものがそれである。

おしまい。