深町秋生『果てしなき渇き』を読む


 コンビニで見かけて……という話はもう書いた。『果てしなき渇き』である。深町作品は何作か読んでいるが、未読だった。これがデビュー作だという。ものすごい密度と速度、そしてどっろどろのノワール。主人公の元刑事が「いくらなんでも主人公がその一線を越えないだろう」というところを平気で踏み越えていく。はっきりいって、エルロイ作品の主人公よりぶっ込んでくる。それがたまらん。
 一方で、不在がゆえの大いなる存在感を示すのが彼の娘である加奈子。行方不明になった彼女をさまざまな登場人物たちが語っていく、形作られていく。天使なのか悪魔なのかなんなのか。空虚のようであり、そんなことはない一人の人間であったはずであり……。空ろではなく「渇き」、そう、あくまで人間の渇きがある。渇望がある。
 この二つの軸をメインに現在と過去を話は行き来し、拡散し、収束し……。実在の事件をベースにアンダーグラウンドで人間たちが獣臭く動く。暴力、セックス、冷たいやつ。別の意味で深町作品の学校ものは怖くて手が出せねえなと思っていたら、本作にも十分出てきて、そいつにも負けた。圧倒的な熱量のようなものがあって、おれはそれに灼かれるような気になった。もし、おれがなにかを燃やすとして、これだけのものがあるのか? という勘違いもいいところの、妙な気持ちにさせられた。クソまみれで国道沿いに捨てられたような気分になった。

果てしなき渇き (宝島社文庫)

果てしなき渇き (宝島社文庫)

 そして、これが映画になったんだからすごい。おれはすげえ観たいと思う。如何に。

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