それは自殺の足音か自分の足音かわからないここは寒い部屋

それは自殺の足音か自分の足音かわからないここは寒い部屋ひとり安酒を呷り目を閉じ耳を塞ぎ逃れられぬもののことを考えないようにしているおれがいる。

もう具体的に考える段階だというのは数字が物語っているおれは数字が嫌いだったが数字が死ねと言えば死ななければならない家賃光熱費食費払えなければ生きていてはいけない二ヶ月はなんとかなるのも慰めにならない。

おれは高いところが苦手だし電車に飛び込むという咄嗟の勇気にも欠けるし現在の薬品は安全に作られているのでいくら脳の処方薬を貯めこんで一気に飲んだところでいけるわけもないし自傷による実現は難しいともいうし車も持っていないしレンタカーを借りる金もないので練炭という線もないし競馬場のトイレ連単で人生アウトというのはふざけた発想で悪くないが現実味はない。

選択肢としてファーストチョイスになりうるのはやはり吊るすことだろうしこの世に生きるに値しない無能の罪人の罰という意味ではしっくりくるところもあって悪くないし苦しい苦しくないはわからないがそれこそ補助としてアルコールなり睡眠薬なりを用いれば生きること死ぬこと二つの苦痛からの解放におおいに役立つように思えるのであとは場所と縄の用意ということになるが後者については普通に革のベルトあたりが上部でよさそうじゃないかと思える。

そうなってしまえばパソコンの中身を見られようがいやらしい雑誌や本を見られようがもはやどうでもいいという心持ちからするとこれの一因である家賃の根拠である部屋に与える損害などもどうでもいいように思うがやはりおおぜいの人に迷惑をかけるのは気が引けるところがあるのでどこか近くの公園の太い木の枝であるとか遊具かなにかですることをして街角の怪談になってみるのもおもしろいように思えるが住み慣れた部屋でというのはなにも後期高齢者や重病者の最後の願いというばかりではなくおれのような願望者にもあるように思えるのだがともかく二ヶ月か三ヶ月後のこと。