ドゥラメンテのダービー

f:id:goldhead:20150601123507j:plain

東京優駿の前にむらさき賞の話をさせてくれ。

レース情報(JRA) - netkeiba.com(むらさき賞2015)

おれの本命はクルミナルの上であるピオネロだった。2番人気馬である。そこから馬連を流した。流したなかに大外のタイセイドリームを入れた。ピオネロは前走湘南ステークスで2着。タイセイドリームは前走湘南ステークスで3着。ラジオ日本の解説者が、ピオネロを評価する以上、タイセイドリームも評価しなくてはいけないと言った。アナウンサーが前走の2着馬と3着馬で万馬券ですからねと言った。だからおれは流したなかにタイセイドリームを入れた。きわどい勝負だった。13人気のタイセイドリームは入れたが、16人気のセキショウは入れていない。が、なんとかタイセイドリームが2着に届いた。馬連で9000円ついた。おれはもう、この日は上がりにしてもいいかな、と思った。思ったけれども、次は日本ダービーだった。どうせ散財することになるのなら、日本ダービーを買おうと思った。

テレビでパドックなど流れるのを見た。おれに馬体の良し悪しはわからない。ただ、ドゥラメンテに王者の風格のようなものを感じた。いくら王者の風格を漂わせようと、負けるときは負ける。とはいえ、漂わせていないより漂わせているほうがいいに決まっている。おれの狙いは人気馬→人気薄、人気薄の、近頃のダービーにありがちな組み合わせ。問題は具体的にどの人気馬を選ぶか、どの人気薄を選ぶかまったく決まっていないことだった。おれは人気馬=ドゥラメンテにすることにした。リアルスティール、サトノクラウンとくらべて、好き嫌いのような点でいってもドゥラメンテのほうが面白い。好調な清水成駿も鉄板って言ってるじゃないか。

そしておれは……ドゥラメンテからの三連単マルチを買った。60点も買った。普通だったら一着固定か一、二着折り返しから数点と絞る。これも、むらさき賞のせいである。それに、ドゥラメンテとて今本命にしたばかりの馬である。馬にすぎない。2着、3着もありうる。人気薄→人気薄→ドゥラメンテでもいいじゃないか。夢が見られるかもしれない。

相手はなにか。おれは慎重派なのでそれでもリアルスティールとサトノクラウンを入れた。そして、東スポ本紙もチェックしとけよと言っていた、個人的に勢いがあるんじゃないかというミュゼスルタンとミュゼエイリアンを入れた。最後にポルトドートウィユを入れた。武豊はあやしい。この馬で3着あたりに滑りこみそうな気がした。すごくした。ついでに上記からサトノクラウンを抜いた三連複ボックスも買った。ドゥラメンテが飛んだときのためだ。それでも少しは面白いだろう。

レース情報(JRA) - netkeiba.com東京優駿2015)

正直なところ、おれはもう馬券を買い終えてあたったつもりになっていた。三連単の組み合わせでトリガミになるのか、結構ウハウハザブーンなのか、そればかり気にしていた。こんなに、最高に当たり馬券を持っている気分というのはなかなかないぜ、と思った。そのおれを切り取って辞書の「狸の皮算用」の項目に貼り付けておいてもいいくらいだった。実際、そうなった。

好走例の多い最内枠、腕っこきの岩田康誠、あなどれない京都新聞杯勝ち馬サトノラーゼンを無視したのはなぜだったのか。それは、どこかで目にした「今年のトライアル組は低レベル」というのが頭にあったからだ。妙に人気してるんじゃないのか、とも思ったからだ。だから、青葉賞勝ち馬も無視した。でも、ポルトドートウィユを買うんなら、サトノラーゼンも抑えなきゃ、という具合だろうか。それにしてもまあ、馬連も抑えておくべきだったか、とか言い始めるとキリがない。欲をかいて滅多にしない他点数買いをして(もっとも、三連単の妙味は手を広げて大爆発を期待するところにあるような気はするが)、自滅した。それがおれのダービーだった。実況くらいひどかった。ふだんは人気馬に注目しすぎて、そればかり連呼して、肝心の勝ち馬ノーマークが叩かれるような実況、昨日についてはドゥラメンテをノーマークという失態だった。おれは「ドゥラメンテ来てるよな、先頭だよな、幻でも見ているのか」と不安になった。あれはいったいなんだったのか。まあいいが。

ドゥラメンテは中団のいい位置につけて、外から被されるでもなく、非常に恵まれた展開だったように見えた。恵まれたのだから勝てた、とは言わないが、恵まれていたように見えた。そういう運を味方にするのもダービー馬というものだろう。三冠を目指すのか、凱旋門賞を目指すのか、さてどうするのだろう。おれとしては「どっちでもいい」というところ。ただ、日本馬が凱旋門賞を勝ったらエンドロールが流れてきて日本競馬ゲームクリアで終了、になりそうな気がしている。まあそれも悪くないが。

リアルスティールは後ろから行く作戦だったようだが、先に抜けだしても狙い撃ちでズドンとやられる確率より、相手が先に脚を使い切る確率をとったのだろうか。サトノ2頭についてはいいです。ミュゼ勢は先頭と後方から。スルタンのほうがレース後下馬だが、大事には至らなかったようでなにより。しかしまあ、一気にかっさらう可能性まで考えていたけど、そう甘くはない。サトノ勢に「まだ早い」と言われているようだった。ポルトドートウィユは人気くらいの実力というところだろうか。

その後、11レースも獲ったが人気サイドで傷は癒えず、最終の目黒記念はレコンダイトから流したが、ヒットザターゲットが抜けていた。また最内にやられた。そしておれの今年のダービーデーは終わった。おれは夜までふて寝した。目が覚めてテキーラを呷った。むらさき賞でやめておくべきだったと思ったが、そうはいかないものだと思い直した。そういうものなんだ、競馬は。