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今夜だけはカープのために泣かせてくれ、吐かせてくれ

広島東洋カープが25年ぶりに優勝した。25年前のおれは今後25年間カープが優勝しないなんて信じなかっただろう。だが、25年かかったのだ。25歳の人がいるとすれば、それはもうまったくの0歳のときから、分別ある大人になるだけの時間だ。そんなに長い間カープはリーグ優勝出来なかった。25年後のおれも信じられない。

今日の試合がNHKで放送されたのも偶然だったのだろうか。たぶんそうだろう。その偶然を引き寄せたのは藤川球児の被弾であり、大竹の勝利だった。それによって、おれはテレビで観戦しながらカープの優勝を見ることができた。Twitterでつぶやくことができた。

なによりも今日、カープが勝てた。先発の黒田博樹は先制弾を浴びながらも粘った。打席でも粘った。マイコラスの球数はどんどん伸びていった。逆転のカープ。今年のカープはそういうカープだった。先制されてもじわじわと敵を追い詰め、試合をひっくり返してきた。今日のカープもそうだった。鈴木誠也の一発。余韻冷めやらぬ中での松山の一発。新井さんの……なにかよくわからない得点。そして、自慢の中継ぎ陣、そしてもう守護神と言っていいかもしれない中崎が最後を〆た。今年のカープらしい試合で優勝を決めたといっていい。

それにしても、いつの間に、いつの間に選手層が厚くなったのだろう。田中、菊池、丸の三人が実力を発揮したとか、鈴木誠也が「神ってる」成長を遂げたとかあるだろう。あるだろうが、おれは層の厚さというところがたいへん今までのカープと違うところだと思う。今日のレフト先発は松山。それで、代打にエルドレッドが控えている。さらに、エルドレッドが怪我や不調であるならば、ルナが下で控えている。サードにしたっていろいろの選択肢がある。新井貴浩だって休ませることができる。実力あるスターティングメンバーが実力を発揮する。それだけでは長いシーズンを戦えない。層の厚さ、これが今年のカープの強さだと思う。

まあ、もちろん、レギュラーの面々が確実に力を出せたというのも大きい。石井琢朗コーチのおかげかどうかしらないが、ともかく菊池と丸の打撃が好調であれば、これは恐ろしい。新井さんが待っているし、さらに鈴木誠也や松山が待っている。エルドレッドやルナもいる。これは怖い。そして、一番打者の田中が一番打者の役割をまっとうする。打線の穴といえば守備力のある石原の不調あたりだろうが、それも後半二割台に乗せてきた。もちろん、若い會澤だっている。

投手陣も、前田健太が抜けたとはいえ、野村祐輔の台頭があった、ジョンソンがよく投げた、黒田博樹がしっかりとローテを回した。ヘーゲンズは中継ぎから先発に回ってもよく投げてくれた。そしてジャクソン、今村、大瀬良、一岡、中崎……。左といえばオスカルくらいで、そこはウィークポイントだが、そんなの関係なしにねじ伏せてきた。すばらしい。

まあ、なんでもいい、ともかく優勝したのだ。おれは、クライマックスシリーズ自体には賛成だった(上位3チームでなく2チームでいいんじゃないの、とは思っていたけれど)が、いまいちリーグ優勝の重みとやらを理解していなかった。今回、こうなって、おれは初めてリーグ優勝の重み、シーズンを勝ち抜く重みを感じている。これはこれで一つの充足がある。クライマックスシリーズ日本シリーズがどうであれ、充分にリーグ優勝というものに感じ入ることができた。これで日本シリーズ進出を逃しても、それはそれ、という感じである。リーグ優勝をしたチームのファンとしてもあえて言おう、クライマックスシリーズの制度は悪くない、と。

それにしても、おれははしゃいでいた。どうしていいのかわからないくらいだった。500mlのビールを飲んだ。ポテト・チップスを食った。アドボカートをプリンにかけて食った。またビールを飲んだ。今はテキーラを飲んでいる。赤いカープのシャツを着ている。晩飯はいらない。飲み過ぎた、吐きそうだ、吐いてもいい、25年ぶりだ。

おれは、明日、何時になるかわからないが、コンビニに行って、スポーツ新聞を買い漁るだろう。そんなもの買い漁ったって、額装するわけでもないだろう。でも、おれはスポーツ新聞を買うんだ。もちろん、一面がカープのやつだけだ。そこには、黒田のカープ復帰のことが書かれているだろう。新井のカープ復帰のことが書かれているだろう。おれにもいろいろ言いたいことはある。新井がカープを去ったときには、心底心が冷えたものだった。でも、もういい。もういいんだ。今夜だけはカープのために泣かせてくれ、吐かせてくれ、この一切を。