ロジータ記念(川崎)

 大学をドロップ・アウトしてウロウロしていたころの話を書く。当世風に言えば、ニートというやつだろう。季節はいつだったろうか。夏かも知れない。よく晴れた日だった。僕は内馬場の芝生の上に、新聞をひいて寝転んだ。寝転んで見上げたくなるくらい晴れていたのだ。しばらくすると、レースが始まった。新馬戦だ。僕は起きあがって実況を聞いた。女性の声だったと思う。勝ったのはテーケーレディーという馬。実況は盛んに「ロジータの妹」を繰り返していた。僕は「ああ、川崎はロジータの競馬場なのだなぁ」と思った。
 テーケーレディーや、ロジータに心動かされて職を探し始めたりしなかった。川崎競馬に惚れ込んで、毎日通うようになったわけでもなかった。そんな都合のいい話はないのだ。ただ単に、テーケーレディーが勝った日の空が、すごく晴れていたというだけのことだ。
 テーケーレディーはその年の東京3歳優駿牝馬を勝った。その後、何度か競馬場で見た気もする。今、どこで何をしているのかは知らない。
 そして、数えて十五回目、今年のロジータ記念。台風で二日延びた。やはり競馬は晴れている方がいい。クラシック戦線を健闘したアイチャンルック。ここは鞍上に的場文男を迎えて勝ちたいところ。相手には、前走大敗も二走前の高崎遠征で結果を出したパッションマリー、あとは八枠二頭とクラマサライデンの前残りに注意しとこう。あんまり配当望めないかな。
 結果:スタートで首を挙げて半歩ほど遅れたアイチャンルック。的場が押して押して強引に先行策。道中二番手からの競馬。首の高い馬だな。二週目向こうあたりでゴールドファミリーが仕掛けて来たが、それに合わせて先頭へ。そっから押し切っての勝利。鞍上強化大成功。二着はカネマサヴィーナスがゴールドをハナ差交わす。馬券的にはカネマサさえいなければ、その後の三頭どれでも良かったんだけどなぁ。がっくり。