いけづき

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20041129k0000m040072000c.html

ブタの内臓にはHEVが潜んでいる可能性があり、生焼けで食べたのが感染原因だろう。野生でなくとも、動物の肉を生で食べることは避けた方がよい。

 何事も生に限る。ビールは生ビール、野菜は生野菜、スポーツは生観戦。だが、生で観戦なら大歓迎だが、生で感染となると洒落にならない。ストップ・エイズ、セーフ・セックス。
 いや、生肉の話だ。俺はどうも生肉にひかれる。牛でも豚でも鶏でも、「このまま喰いたい」という衝動に駆られる。もちろん、駆り立てられるだけで、その結果横たわりはしない。しかし、いくらデジタル化が進もうと肉を焼く行為はアナログ。この世界に折衷案として生焼けという提案がなされた。
 もちろん、生肉喰い衝動だけではない。プロパンガス代。世界情勢から値上がりのお知らせ。資源も枯渇していくのか。守ろうかけがえのない地球。
 かといって枯渇するサイフの現状から俺は内臓をよく買う。みんな内臓は嫌いか。量の割に安いぞ。そいつをお好み焼きに混ぜてジュージューやる。下準備もしない。で、小麦粉も半生に限る俺は時期尚早に火を止める。流石に早いという時も「ガス代」と魔法の言葉をつぶやけば、不思議と火は消える。半生でも感染したり妊娠したりするらしいぞ。
 俺は昔、鹿の刺身を食った。家族旅行でどこかの山中。他に店らしい店もなく、いかにも普通の定食屋に入った。メニューに「鹿の刺身定食」とある。生肉喰いの若く敏感なつぼみをふくらませた俺は、物珍しさにひかれたふりをしてそれを選んだ。なかなか出てこない。鍋焼きうどんとか先に出てきた。最後に出てきた、鹿の刺身はかちかちに凍っていた。電子レンジ普及せざる時代か土地か。それともこれはソルベかしらん。鹿の刺身に味も香りもなかった。
 この項のタイトルの‘いけづき’は、宇治川の先陣争いで名を挙げし佐々木四郎高綱の名馬「池月」のこと。なぜ名馬と生肉の話か。いけづきは馬のくせに生で生き物を喰らうと言われ‘生喰(いけづき)’*1由来との説もあるのだ。
 この馬の名、同じく名馬‘磨墨’とともに、‘池月・磨墨賞’として、なぜか大井の条件戦の名になっておる。また、サンエイサンキューの馬主がサンエイの名を捨てたのちに冠としたのもスルスミだったか。
 ところで俺は、決して馬の肉は喰わぬ。鹿肉を喰った俺が馬の肉まで喰ったら、肝炎などより悪いのに感染するに決まっているからな。

*1:生食やもうちょっと難しい漢字を使う表記もあるかと思うが、そもそも「食く(すく)」のことだからどれでもよかろう