新選組!の感想

 今回は見どころが多く、どこから感想を書いていいかわからない。わからないので、有馬藤太役の古田新太について書く。私は古田新太という名はずいぶん昔から知っていた。オールナイトニッポンの第二部を聞いていたからである。当時中学生だった私は、その番組のエロコーナーに胸ときめかせていたのだ。その後、「古田新太は本名」などという知識を得ながらも、未だに古田新太が何を生業とする人なのか皆目分からない。
 さて、有馬藤太である。はじめのチェスト連呼に、どんなキャラ設定なのかと思いきや、実に薩摩隼人であった。そしてまた、この配役も見事であり、このドラマの一部配役の見事さは、今後百年間新選組ドラマの歴史に語り継がれるのではなかろうか。
 そして個人的に語りたいのは、寺で練兵中のシーン。二重の意味で芝居をしすぎな香取慎吾というか近藤勇はいいとして、やはり呼ばれもしないのに出てきた捨助だ。「え、まさかこいつのうっかりで?」という、これまた劇中とメタでの二重のドキドキである。さらに、いきなり撃ったり斬ったりしようとする土方。冒頭、釣りのシーンで言われた「こいつは変わらん」が効いてくる。それにしても、「誠」の旗をあんなとこに置いとくのはいかがなものか。
 旗と言えば、さっそく前回の絶叫をいじられる斉藤一。叫んだ直後も照れくさそうだったけど、今回も思わずキレて掴みかかるあたりがいいです。ひょっとしてオダギリジョー自身もこういう人なのかな、などと思ってしまう。こいつも変わらんといえば変わらんのか。そういえばこのシーン、石田散薬が小道具として出てきた。多摩の薬剤師会がアピールしたくなるのもわかるというもの。
 さて、石田散薬でも治せぬ病の沖田総司。いっそう顔色が悪くなってますが、痴話げんかをするくらいの元気はある。そこへ訪ねてくるは斉藤一。絶叫の一件を知らない人と話したかったのだろうか。とはいえ、「いつ死ぬんだ?」というセリフにはしびれた。さすがは人斬りの単刀直入。切れ味が違う。もっとも、話は斬った貼ったの時代ではなく、鉄砲の時代話。前もちょっと書いたけど、確かに新選組というのはいろいろな偶然が重なって名を残した存在。市街地でのゲリラ戦を得意としたとはいえ、最初から銃が中心的な存在だったら、最後の剣豪集団にはなり得なかった。そしてまた、沖田の名も半ば伝説的な存在として後世に語り継がれることもなかったであろう。ここらあたり、まさに歴史の妙味である。
 その新選組を語り継ぐ貴重な語り部の一人は、近藤と袂を分かった永倉新八である。原田と一緒に団子など食っていたが、こんな見るからに物騒な二人がうろついていては、放っておいても通報されそう。さらにここで、原田とも別れる。原田は京へ行くというが、その後については最終回でどういう風に描かれるのだろうか。
 こんな風に描かれるとは想像もしなかった、というのは今回のラスト。もちろん、いい意味で、だ。普通、元御陵衛士の面通しとなれば「間違いなく近藤です」と言って終わりでしょう。そこを、目と目で語り合って、近藤から「久しぶりだな」と言わせてしまう。これにはしびれるじゃないですか。どうも香取慎吾は気張りすぎ(あるいはそういう役柄で、香取慎吾は悪くないのかもしれないけれど)、と思っている自分も、ここのところの芝居はよかったと思う。
 さて、来週はいよいよ最終回。近藤の最期、そして、それぞれの隊士のそれぞれのその後をどう描くのか、今から楽しみだ。今回は訳あって録画で見たが、来週は開始時刻を正座して待とう。こんなにテレビ・ドラマを見るのは、生まれて初めてかもしれない。来年からはどうしよう、というのは気が早すぎるか。