新選組!の総括

 昨夜一挙に総集編を放送していた。俺は未見だった前半部分と、ラスト付近をしっかり見た。そして思った。やはり俺はこのドラマの近藤勇がわからない、と。
 何度も日記に書いたけれど、このドラマの脇役が見事に描かれている。他の作品ではあまり深く語られない藤堂平助をはじめ、新見錦山南敬助武田観柳斎伊東甲子太郎勝海舟、大石鍬次郎などなど、枚挙にいとまがない。もちろん、沖田、永倉、斉藤、原田などもぴったりだったと思う。しかし、肝心の近藤と土方にイマイチ感を抱いていたのは否めない。
 俺は最初、失礼ながら香取慎吾山本耕史の配役に問題があると思っていた。しかし、昨日あらためて見返し、そうではないと思った。近藤の生きざまが定まってない、キャラが、意志が、「誠」が定まっていないと感じたのだ。そうなると、近藤に寄り添う土方も定まらない。共倒れだ。
 近藤は何の目的で平穏な暮らしを捨て、一旗揚げて時代に逆らったのか。「百姓の出だが武士より武士らしくなりたい」のか、「単に一旗揚げたかった」のか、「ご公儀の恩に報いる」のか、「松平容保の恩に報いる」のか、「国の平安のために働く」のか、「何かよくわからないが、何かせずにはいられなかった」のか……。もちろん、そのどれもが正解というわけでもないし、本当のところなんて死んだ近藤だって答えられるかどうかわからない。では、このドラマではどういう風に描かれたのか。となると、「全部提出してみました」という感じではなかったかと思うのだ。俺は最後までこのドラマでは何が「誠」なのかわからなかった。
 もちろん、人がいろいろな想いを抱くのは当然だ。しかし、ドラマの主役がどれもこれもとなると、見ている側としては困ってしまう。もちろん、主役が思い悩んであれこれというのはあるだろうが、芯に一本の軸が欲しかった。あるいは、方向転換するなら、バシッと方向転換するようなポイントが欲しかった。しかし、このドラマではどれもあやふやだった。近藤は最後まで生真面目なだけだった。それがどうにも残念だ。
 俺は途中から一回も欠かさず新選組!を楽しみに見てきたし、あれやこれや感想を書いたりするくらい好きだった。もちろん、近藤にしびれるシーンもあった。しかし、やはり最後まで主役への違和感は消えなかったのだ。群像劇のそれぞれの流れは実に見事だった。しかし、大河の主流たるべき主役がいまいちだった。それが、俺みたいな幕末話好きを虜にしても、広く視聴率的な人気が出なかった理由ではないかとも思うのだ。
 もっとも、視聴率なんてどうでもよろしい。俺は俺なりにこのドラマを楽しんだ。俺がこんなにドラマを見るのは実に久しぶり、いや、初めてかも知れないことだった。俺は新選組について考えるとき、今後もこのドラマのことを念頭に置くだろう。俺は制作者一同にありがとうと言いたいのだ。