今日は本当に眠い

 遅くても夜の十二時頃には寝て、朝七時半に起きる俺は、昼間に眠くなることは滅多にない。ところが今日は違う。それは、久々のゲームで夜更かししたから、ではなく、隣人のテレビの音が大きかったからである。午前一時ごろまでヘッドホン付きでゲームをやっており、いざ寝ようとすると隣の部屋のテレビの音がむちゃくちゃ響いてくる。いや、たまに大きな音を出す人ではあるのだけれど、いくらなんでもこの時間は酷い。しばらくしたら慣れるかと、玉吉の漫画などを読んでいたが、二時になっても収まらない。さすがに眠れないのは困るので、壁をガンガン殴ったり蹴ったり、「うるさいですよ」という意思表示をするちょっと大きな声を出したのだけれど、一向におさまらない。いったん小さくなったかと思えば、またそれ以上にボリュームを上げたりする。聞こえてくる音はアニメの「ルパン三世」だ。間にドラゴンボールのCMが入ったりした。ビデオだろうか。しかしこれはもう、完全に俺に殺されても構わないと思っているのだろうし、俺を殺しても構わないと思っている行動だ。いったんは外に出てインターホンから抗議の意志を伝えようかと思ってベッドから降りたのだけれど、そこでふと我に返る。臆病風に吹かれたと言ってもいい。何せ俺は隣の人間について何一つ知らない。PS2も買ったばかりだし、恵方に向かって太巻き食ったばかりだ。わざわざ今日この日に、さらに嫌な気持ちにならなくたっていいじゃないか。時計は三時を回っていた。俺はジンをラッパ飲みして、ベッドに戻った。普段はそんな量をいっぺんに飲まないので、手足に妙なしびれが来た。その晩は太巻きしか食べていなかったので、胃が熱い。ただ、頭はスーッとモヤがかかったようで、ルパン三世の音も遠くに聞こえるみたいだ。そんな中、ドカン、ドカン、と向こうから壁を叩く音が聞こえたと思う。多分、あちらが出した音だろう。まあいいじゃないか。引っ越してから一年、ようやくお近づきになれたんだ。俺は家族にキチガイが居たからそういう音にも声にも耐性があるぞ。それに俺は、そのキチガイの子どもだぜ。おまけに俺には棒に振る人生なんてないからな。けど、俺は臆病者だから何もできないだろう。安心してルパンを楽しんでくれ。007のテーマ曲を、ブルース・リーの映画の曲を流してくれ。