タイガー&ドラゴンの感想

 はっきり言っておくが、今回もっとも重要な役割を果たした者は、ふかわりょうである。お笑いにこだわりのある者が比較されてショックを受ける芸人として、天地開闢以来ふかわ以上に適した者はいない。また言っておく、抱かれたくない男として引き合いに出される者として出川哲朗以上の者はいなかったと。
 他に二人の芸人が現れた。ヒロシと次長課長の河本だ。ヒロシについては元ネタ(初回スペシャル時登場らしい)があるようだが、私は知らない。そして劉さんが今後再び立ち現れるのを願う。
 再び登場する者があった。高田文夫である。ペラペラと喋りまくる浮いた雰囲気はこの男にしか出せない。また、いつも私が高田文夫について語るときに言及する「日刊スポーツ」をさりげなく宣伝するところも面白かった。あれはアドリブではないかと推測するが、それは神のみぞ知ることである。
 今回の本題にも触れねばならぬ。落語のお題は「猫の皿」であり、岡田准一の落語家復帰であった。六十八万円のジーンズ話にお笑いスカウトキャラバンと盛りだくさんであった。そして、小日向文世の会長役もよかったと言っておく。いちいち言うまでもないが、やはり毎回配役の妙を感じる。優れたドラマは配役が優れているから優れたドラマなのか、優れたドラマはあらゆる配役を優れたものに見せるのか。いや、その解析はあり得ない。渾然一体となって姿を現すのが優れたドラマである。
 筋としても何やらタイガー&ドラゴン自体に自己言及するが如き「落語ブーム」から入る。小虎もルックスでも人気があると、見たままの軸を逸らさない点に留意すべきだ。ジャニーズのアイドルが演じながら、それがモテない役タイプの役柄であるときの違和感を私は糾弾したい。しかし、一口にジャニーズといっても、モテない役が似合う男が居ることも忘れてはいけない。しかし、私は彼らの名を語る勇気はない。
 いつも誉めていてばかりいては高田亭馬場彦と同じになるので、引っ掛かった点も書く。岡田の噺シーンだ。岡田は役どころである「落語の天才」にピッタリであり、落語について語るときのテンションなどは見事。さらには「ドラゴン、ドラゴン」言いながら舞台にでたときは、思わずテレビの前から逃げそうになってしまったほどである。しかし、肝心の噺シーンにつまずいてしまう。はじめのころ「落語の良し悪しなどわからぬから、ドラマ内の噺の良し悪しは気にならない」と思ったものだが、何度か見るうちに師匠役の西田敏行の噺にもつまずくようになってしまった。となると、劇中で「天才」と称される岡田の噺も物足りないというか、「そんなに上手いのか?」と思うようになってしまったのだ。無論、落語家のように話せとは言わない。落語家のように話せる者は、落語家であり、オートレーサーのように走れる者はオートレーサーである。
 むしろ、私はこう考える。ドラマ内の落語に飽き足らなくなった者は、落語全集のDVDを欲するだろう。それこそが、本当の落語ブームを巻き起こそうとする宮藤官九郎の策略であると。その一環として、親分の笑福亭が高座に上がるやもしれぬ。努々気をつけねばならぬ。しかし、はっきり言っておくが、別にドラマが入口で落語ファンになったっていいじゃないか。