夢のある話

 夢をとんと見なくなった。昔の嫌な思い出を再現してくれるような夢すら恋しい。そんな俺が、昨夜久々に夢を見た。かなり貴重な夢に違いない。ところが、その内容が酷かった。冷凍庫の霜取りをする夢なのだ。登場人物、俺一人。場所、俺のアパート。そして霜取り、「そろそろしなきゃいけないな」と思っていたところ(記録によると去年の十一月以来していないid:goldhead:20041102/p1)。唯一夢らしいファンタジーは、霜を取るのに使った道具。プラスチック製のフライ返し。フライパンの表面を痛めないよう、百円ショップで買ったやつ。そんなもの、先が尖ってるわけでもなく霜に突き刺さるわけがない。それが、夢の中なので、スッと食い込むとからんころん霜を削いでいくじゃないですか。それで、「やっぱり冷凍庫の中身が少なくなってるチャンスにやってよかった」などと満足したものです。もちろん、それも儚いまぼろし、霧散してしまう幸福の残り香に他なりません。夢の圧倒的な広がりの前には、現実の人生なんてまるでちっぽけなもののように思えてくるから悲しいものです。