『ニューロマンサー』ウィリアム・ギブスン

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港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった。

 サイバーパンクがどういうジャンルか俺にはよくわからないし、SFの歴史だってよく知らない。ただ、これがサイバーパンクの始祖である、ということは知っていた。読書の興味として「一応押さえておかなくてはな」程度の思いがあったのは事実だ。そして、読んでみて腰を抜かすほど驚いた。これ、無茶苦茶面白い。
 まさに時代を先取りしすぎたかのような、電脳空間の描写や人体改造、千葉シティについては言うに及ばず、なんといっても話の基盤になるハードボイルド、そして悲しい男と女の話。さらには『キルビル』みたいな忍者まで出てくる。ここらあたりが、独特な訳と相まって抜群の完成度なのだ。やはり、記念碑となるような作品は物が違う。
 となると、やはりジャンルの記念碑的作品は、先に押さえておくべきなのだろうか。いや、しかし、そうとも限らないか。俺が『ニューロマンサー』が後に影響を与えたであろう多くの諸作品(漫画、アニメ、ゲーム、映画、小説)を知らなければ、この世界に面食らってしまって十分に楽しめなかった可能性もある。いや、しかし最初の衝撃ならばもっと大きかったのか? 経験ばかりは今のところ書き換え不可能なので、こればかりは検証しようがないのが残念だ。