流れよ我が涙、と神に背いてItと呼ばれた少年は言った

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20060221

30歳代の作家志望の女性ローラ・アルバートが自分で書いたやおい小説「サラ」を売り込むため、JTリロイという少年が書いた自伝ということにしたそうです。

実はリロイに限らず、日本で本当だと信じられている「実話」本でも、アメリカではインチキと言われている本も多い。
たとえばデイヴ・ペルザーの『It”(それ)と呼ばれた子』ISBN:4789719251

 だらだらと自ニュFなど見ていて、そこ(http://news.2-3-0.org/comment/comment_200602_346.php)から町山智浩氏のブログに飛んで見つけたのが上の記事。自ニュFで話題になっていたことよりも、こちらに関心を持った。なにせ両方とも去年読んだ本だったからだ。むむむ、中の人(という言い方でいいのかな)が居たのか。
 『サラ、神に背いた少年』についての感想はこれ(id:goldhead:20050503#p2)。「著者の写真を見ると女装が似合いそうな感じ」というのは当たり前で、その写真は女そのものだったわけだ。しかし、「ただ、著者の経歴が本当ならば、単なる身の上話だってつまらなくなりそうもない」と期待し、それに裏切られた印象(要するにつまらない)を持ったのは、なかなか勘が鋭かったかとか自画自賛してみたり。いや、馬券買っておけばよかった。いや、しかし、作りとはまでは言えなかったわけだから、今日の馬券みたいになっただけか。
 で、もう一つの、『“It”(それ)と呼ばれた子』の感想はこちら(id:goldhead:20050808#p2)。こちらも完全に騙されたというか、あまりに虐待場面ばかりだったので、普通に本当のことと思っていた。サラの方は「さもありなん」という印象だけど、こっちは「うまいこと(?)騙された」という感じ。中の人の技量はこちらが断然だとか言い訳したくなる(何に対して?)。
 いやはや、しかし、こんな話もあるものか。「人間の手で書かれた(描かれた、撮られた……)物にフィクションもノンフィクションもない(すべてフィクションだ)」みたいな割り切り方もできるんだろうけど、やはりノンフィクションと銘打たれているものには、なにかその、それが担保になるというか、そういう前提を飲み込んだ上で読んだりするわけで、「つまらないけど実話だから」だとか「変だけど実話なのか」とか、そこらへんでいろいろな作用が出てきたりとかするわけで。ああ、『ファーゴ』とか『シリアル・ママ』はズバリそれを狙ったものだったか。そういえば『ファーゴ』のお金を探しに行って死んだ日本人女性の話は……こういうことだったのね→(http://www.med-legend.com/column/urbanlegend11.html#death_in_the_snow)。
 えーとなんだっけ。そうか、サラとイット。何かのどに引っかかった小骨のようなというか、とにかく自分の中で同じ箱にしまわれていた二作品について、何かすっきりしたという感じ。いや、何の原本を直接見たわけではないのだけれど。