『ホログラム街の女』フレデリック・ポール・ウィルスン

ホログラム街の女 (ハヤカワ文庫SF)

ホログラム街の女 (ハヤカワ文庫SF)

 伊勢佐木町ブックオフ、SFは少ない。しかし、それなりに出入りがあるので、たまにめっけもんもある。あるのだけれど、ここのところひどかった。行っても全然変わってない。しかし、ブックオフがどういう仕組みになっているのか知らないが、上巻だけ、下巻だけ、といった棚の状態では、なかなか売れていかないと思うのだが……。
 そこで、しびれを切らして一冊買った。何度か行って何度もあったこの『ホログラム街の女』だ。なんとなくテレビゲームのような展開を期待して買ったのだ。アイテムショップのランダムで変わる品揃え、その品目を変えるために、必要でもないアイテムを買う感覚。
 ……でも、もちろん読むために買うのだから、趣味に近ければいいかと。そういうわけで、本作はハードボイルド+サイバーパンク的な作品。主人公は私立探偵、社会は厳重な人口抑制政策下。一般市民は「真民」で、あとは出産制限をかいくぐって産み落とされ、捨てられた「落とし子」、それと、性玩具のクローン。そんな感じ。
 で、クローンの女が主人公に依頼するところからはじまるが……、どうも主人公(および作品世界)のクローンへの蔑視にピンとこなかった。まあ、そもそも人間っぽい非人間へ許容度が高い日本人の俺だし、その手のいろいろな作品にも触れてきたわけだし……、でも、ちょっとなんか説明不足というか、そっちの世界観に入っていけるところが少なかった。それに、主人公の抱えるコンプレックスみたいなものも、なんとなく設定通り的で、悪夢感は少ないな……とか。
 と、一部(中編三つを一つに再編成したような形)を読み終わったあたりで、あんまり面白くないかもな、と。でも、二部。この冒頭。こういう始まり方の小説が他にあるだろうか。いや、なんかあるかもしれないが、俺は知らない。どーすんだよって感じで、ゾワゾワしながら読み進めなきゃいかんって気に。そうだな、よう知らないが、どうもこの作者はホラー作家として分類されているらしい。なんかそのあたりのゾワゾワくる気持ち悪さ、そのあたりは巧いかもだ。
 で、二部、そして三部と、かわいい「落とし子」の男の子が出てきて、最後はけっこうな盛り上がりを見せる展開に。105円で買った分には満足の作品なのであったっと。これでフラグが立って、ブックオフの棚も変わらないだろうか?