『千年女優』監督:今敏

千年女優 [DVD]
 うっすらと存在を知っていたが、中身はぜんぜん知らなかったアニメ。タイトルとおぼろげに見たような宣伝などからは、壮大なSF? 伝奇もの? という印象であったが、見終えた印象では『全身小説家』みてえな意味での『千年女優』かな、とか思った。まあ、見終えた印象というより、これの感想やレビューなどを見るとちらほら話題にもなっている、最後の一言だな。
 その一言、なんかすげえひっくり返されたような気もしたけれど、女優なるものを考えると腑に落ちるところもある。あるのだけれど、じゃあ作品中にそれを示唆するようなところがあるかというと、ちょっと微妙なところで、あからさまなものでは萎えるが、もうちょっと何かあればという気がしないでもないのである。この一言、無かったら無かったであまり作品の印象が残らないような気もするし、一台詞の効果としてはなかなかに大きいものであったとは思う。
 「作品の印象が残らない」って、そんなに平板で退屈かというと、まあそこまでではない。ないのだけれど、元女優の現実と作品が入り乱れた回顧とその中に取材者が入っていくという構成、その構図どまりで虚は虚、実は実、すべては語りの中だけのことというところがはっきりしていていまいち円環する恐怖に欠ける。はじめは「これはおもしろい!」と思ったけど、そのままだったので。あと、ほかにいろいろなものにたとえられるんだろうけど、俺の場合はどうしても『マルホランド・ドライブ』と比較してしまうところがあるので。
 でも、やはり当世一流のアニメーションの実力というようなものは味わえた。老婆がいきいきとしていねえのはしょうがないとしても(宮崎駿の婆はいきいきしすぎだけど)、少女時代から大人の女への移り変わりとかさ、やっぱ女の子は魅力的だったよ。
 あー、しかし、一番の収穫というとなんだけれど、「これは!」と思ったのは音楽。劇中のそれもよかったし、エンディングテーマは何度か聴きかえした。平沢進という人か。
wikipedia:平沢進

 うーむ、なんかいろいろ。サイトの方で「ロタティオン(LOTUS-2)」も聴けるな。ほかにもいろいろ公開されてるんで、チェックしてみっか。ああ、あと、もちろん、同じ監督の『パプリカ』も見てみるよ、と。