甦るフジキセキ

 サンクラシークの激走に触発されたのか、その半日後の高松宮記念でもフジキセキ産駒ファイングレインがG1初制覇を果たした。2着キンシャサノキセキとのワンツーは、これまたサンデーサイレンスの十八番(おはこ)だった。すでに種牡馬生活の長さでは偉大な父を超えたフジキセキだが、もしかすると“ポストSS”の本領発揮は、これからなのかもしれない。

http://www.sponichi.co.jp/gamble/column/bloodtopic/KFullNormal20080401038.html

 俺がちょうど競馬を始めたときの春競馬。主役を張るのがフジキセキだった。弥生賞前の段階で、「二十年に一度の名馬」、「シンボリルドルフの再来」などとスーパー競馬で煽られており、なんとなくうさんくささを感じつつも、無敗で弥生を制するのを見て「このタイミングで競馬を見始めて幸運だ」などと思ったりしたもの。この父譲りの青鹿毛の美しくしなやかな馬体、三冠を制するだろう、と、期待に胸脹らませたものだ。……ったのだが、その後に即引退。上の記事の「すでに種牡馬生活の長さでは偉大な父を超えた」というところに、ちょっとくらっとくる。
 さて、種牡馬フジキセキサンデーサイレンス後継種牡馬の一番乗り中の一番乗り(エイシンサンディの方が早いかもしれないが)。当然、サンデーサイレンス並の大活躍を期待した……はずなのだけれど、はっきりいって、今、そのワクワクを思い出せない。さらにいえば、現役時代のフジキセキに感じたワンダーを、まるで感じられなくなってしまっている。昔は鋭く、美しく感じたはずの「フジキセキ」という馬名も、なんだかもっさりしたものに感じられてしまい……。
 それらは、種牡馬フジキセキの産駒たちからイメージ形成されたもの。あくまでイメージだけど、芝のマイルあたりまでと、ダートで堅実にもっさり走る印象、それが強くなってしまったのだ。短い現役時代の、あの強烈なインパクトからはほど遠く……。
 が、しかし、サンデーサイレンス絶対時代に、そのサンデーサイレンスと同じ土俵で戦わなければいけなかった。むしろ、今までは、偉大すぎる父の威光のもと息を潜め、虎視眈々と牙を研いできた雌伏の時代。ここからだ、ここからがフジキセキの時代。クラシック路線に、父の夢を託せるような、ドリームパスポートよりもっと圧倒的な、カネヒキリくらい圧倒的な、そんな子を送り出すのを夢見たいのだ。さらに俺のゴーストは妄想に重ねた妄想でこうささやく、ディープインパクトとかいうのの一番馬を撃沈させて、フジキセキサンデーサイレンスの一番馬だったって証明してやれよ!