『それでもボクはやってない』

それでもボクはやってない スタンダード・エディション [ 周防正行 ]
 こないだテレビでやっていたけれども、それとは関係なくDVDで観た……、観たとはいえないな。日本語字幕+早送りで見た。時間がなかったから、などではない。見ていられなかったのだ。何が見ていられないのか。冤罪がだ。俺は冤罪がとてもきらいだ。いや、冤罪が好きな人がこ世にいるだろうか。いるかもしれない。自らが冤罪で人から責められるというシチュエーションに興奮するドM(やってないのにくやしい! でも、以下略)、そんな人はきっといると思う。でも、残念ながら俺はそういう境地にあるわけでもない。ただただ、嫌なのだ。どのくらい嫌なのかというと、たとえば子供向きのアニメがあるとする、『サザエさん』でも『ちびまる子ちゃん』でもいい。その中の十五分の一エピソードで、カツオやまる子が、何かの行き違いで、してもいないことで親に叱られる、そんなちょっとしたネタ一個にも強い拒否反応が起こるくらいだ。これはもう、昔からだ。司法制度上の冤罪という問題ではなく、「やってもいないことで人から疑われる、罰せられる」という強いストレス、これに弱い。好き嫌いというより、受け付けないのに近い。
 そういうわけで、俺に『それでもボクはやってない』を観られるわけがないのだ。監督は『変態家族兄貴の嫁さん』の周防正行であって、そんな人が時間をかけて丹念に作った冤罪映画なんて観られるわけがない。だからもう、早送りで見た。早送りで見ると、まるで記録映画とか、ドキュメンタリとか、啓発映画とか、教育映画を早送りで見ているようだった。主人公の雰囲気とかいいとは思ったが、さすがに早送りでいいも悪いも言えない。俺はこれを映画としては観ていない。
 痴漢冤罪の話。有罪率99.9%の話。このあたりについてはもう、語られ尽くされていることだろう。ただ、語られただけで、これでいいのかどうか(有罪率が下がるということは、有罪確実でない人が裁判に巻き込まれる可能性が高くなる。無罪が出たところで、裁判沙汰になるということ自体のリスク、ダメージがかなり大きいのが現状ではないか……という見方もあるとかなんとかどっかで読んだ)、みたいな、まあそのあたりはわからん。ともかく、できるだけ満員電車には乗らない。もし、万が一冤罪で「この人痴漢です!」になったら、大人しく示談に応じる(部屋に隠したエロコレクションに自信があるので)、示談金が払えなかったら、大人しく監獄を満喫する。それしかないか。
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