今年も生だよ!新春7時間笑いっぱなし伝説の感想、あるいはNON STYLEに対する自分のもやもやについて

 テレビ東京の吉本芸人大集合番組。生放送。見るのは何度目だろうか。2006年に見た感想があった。俺はこう書いている。

今年見たところによると、吉本の芸人ばかり七十人以上集めたろくでもないノリで、大変に楽しめたのだが。このノリは、司会の今田・東野からやりすぎコージーやりにげコージーのようであり、また、昔のフジの深夜であるところの、殿様のフェロモンかなにかを思い出す。

2006-01-01 - 関内関外日記(跡地)

 今回もまたこのように思った。エロ要素は少ない(女芸人のローションまみれ、お好きな人にはたまらないかも)が、あのころの深夜番組のようだ、と。今もあるのかもしれないが、よく知らない。
 そして、去年も見た。去年の初笑いはこの番組だった。エロ詩吟、天津の木村ではない。アベギス・ハーンである。アベギス・ハーンはいっこうにブレイクしなかったようなので、俺のお笑いを見る目というのはしょうもないものらしい。
 そういうわけで、野性爆弾の本年のブレイクについては怪しいものがある。占いの結果の方を信じてもらいたい(占いの結果=吉本のプッシュと考えていいのかな)。外人を殴らないように。しかし、ともかく俺の2008年12月31日〜2009年1月1日におけるこの世のすべての中のMVPはくーちゃんこと野性爆弾川島邦裕だった。それは自信をもって言える(そりゃあ、俺が俺自身について言及しているのだから、とはいえそう簡単でもないか、人間というもの)。イス-1グランプリでの活躍である。朝の四時くらいに肺と腹筋をやられて死にかけた。
 だってもう、「よだれ和尚」、激震だったわ。そして「ハンガー総理大臣」。なぜか千原ジュニアを「キャンサー」と呼び、「キャンサーのおかげで人間の心取りもどした」だもの。「高めのブローチ」って、どっから出てくるんだ? もちろん、ひとり酒を飲んで徹夜明けかけるころの、こちら側のハイテンションというものはある。が、さっき夕方に録画した(いつ寝てしまってもいいように)ものを見返して、やっぱりひきつった。おそろしい野性の爆弾。これが野爆ワールドか。
 というわけで、東野じゃないけれど、すっかり好きになってしまったのである。野性爆弾というと、「昔、ボキャブラに出てなかったっけ」というくらいの認識しかない(というような表現をするときでも、だいたいウィキペディアくらいは読んでいるので、どう書くのが正しいのかよくわからない。ネットで物を書くときはいつもこの問題に直面する)。野性爆弾野生爆弾かよくわからない程度だ。だから、あのくーちゃんのキャラもどこまで天然であり、どこまで作っているものであるかというところはわからん。が、そんなものわからんでもなんでもいい。ともかく、俺には戦慄の存在に見えた。本物だ、しかし、センスのありすぎる本物だと思えた。もちろん、「おじやいただき」のような事態にもなる。が、あの突き抜けた感じ、笑いの神が降りてきて天然と結びついたような瞬間、ゾーン、ワールドは最高に好きだ。もう、ともかくものすごく笑える。呼吸ができない。ハマる。
 と、ここからM-1グランプリの話などする。この番組の後半に漫才をやるコーナーがある。そこで、歴代M-1王者が立て続けにネタを見せたのだ。いや、これによって自分のモヤモヤをあらためて再認識でき、さらにはなんとなく自分の好みを説明できそうな気になった。
 初手NON STYLE。もちろん俺は笑うためにお笑い番組を見ているので、別に心の壁を作ったりはしていない(つもり)。でも、やっぱり笑えない。M-1で見せたボケの自己ツッコミはあまり見られなかったかな。でも、ともかくあんまり笑えなかった。つまらない、下手というつもりはないし、「すべっている」と思うのとは絶対に違う。しかし、ともかく、笑いの琴線、生理的な部分に引っかかってこない。なんだろう、落語を途中から聞いているような?
 それで、次に出てきたのがチュートリアル。少しノンスタと被るようなネタだったのだけれど、もう徳井義実の異常さに引き込まれた。さらにブラックマヨネーズ。ぶつぶつの顔の方が妄想を繰り広げていく、小杉が乗っていくといういつものスタイルで、これも面白い。
 さあ、何が違ったのか。やっぱりなんだ、ノンスタには異常さが欠けるように思える。異常さというか、キャラの濃さというか。俺はあんまりお笑いを観る機会が少ないせいもあるのだろうけれど、やっぱり一目見てグッと掴んでくれるものがあると、乗っていきやすい。徳井の異常な感じとか、ブラマヨ二人の濃ゆい個性。サンドウィッチマンのチンピラ風や、あるいはオードリーの春日、くーちゃん。そこらへんの、なんというか、代替不可能な個性というか、もちろんノンスタイルにもそういうところが絶対にはるはずなのだろうけれども、初見でいきなりネタを見ただけでは伝わってこない感じ。それで、俺の好きな、なんか神様が降ってきたような、そんな瞬間というのは、どうも濃いやつ、異常なやつに起こりやすい、そういう風に思う。それでもう、そうなったら俺は笑いが止まらなくなるし、俺は俺の腹がひきつるような笑いが好きだ。
 そういえば、競馬評論家の須田鷹雄が、2008年のM-1についてこんなことを書いていた。

ノンスタは、合理性の限りを尽くして勝ったという気がする。それはそれでいいと思うんだけど、自分の好みとして、合理的じゃないサプライズを見たいという思いがあるというか。来るだろうな〜と思った90点のボケより、すげえ意外な85点のほうが嬉しいというか。ノンスタの優勝そのものは、納得のいく結果だと思います。

http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=70345&log=20081222

 このあたり、共感できるというか、同感というか。
 俺は、M-1がどっちを向いてきたとか、今後どうなるとかいう難しいお笑いインテリの話はさっぱりわからん。ただ、今までのM-1勝者には俺のお笑い琴線に触れる要素、すなわち技術以外のわかりやすい個性や外見、スタイルがあったのではないか、そして、ノンスタイルは文字通りノンスタイルでのネタ勝負、技術勝負であって、けれん味のない正統派の存在であって、どうにも俺の好みとは外れていたのではないか、そのように結論づける、とりあえず。たぶん、俺はキワモノっぽいのが好きなのだろう。ただ、顔面芸勝負、一発ギャグ勝負の芸人というのがツボに入ることはまずない。だから、キワモノであり、芸もある、そんなあたりがいい。微妙なライン。しかしなんだ、アベギス・ハーンに一発ネタと技の融合があったかというと、あやしいといわざるをえないのであった。
 つーか、今年も生だよ!新春7時間笑いっぱなし伝説の感想から逸れてしまった。どうしよう。山田花子に彼氏ができた話とか、去年に引き続き麒麟田村の金の話とか(去年のにメモしてるからいいや)、あと、そうだ、ペナルティのワッキーの話だ。今田と東野が、「(ローカルでは?)ずっと人気者だったのに、東京で気づいたらスベリ芸人になっていた」というようなことを言ってて、これってなんだろう、クラスのお調子者、人気者が、あるい日を境に急に「あいつウザイ」とかになって、一気にいじめの対象になるといった、そういった小学校のクラス内のそれに似ているんじゃないかと思った。あるいは、転校生が前の学校内での空気をそのまま持ってきて浮く、とか。それで、たとえば「お調子者で面白い」と「ウザイ」の秤で、前者の方に傾いていたものを「でも、あいつってウザイよな」と言って後者に重り乗っけたのが有吉だとは言わないが、けっこう芸人ってそんなあやういバランスの上に成り立っているような気がしないでもない。あるいは世界が。

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