カメラの入門本を買った 

 デジタル一眼レフカメラを買って二十日くらい経つ。自分には過ぎたおもちゃのように思える。とはいえ、気づいてみればコンデジと同じようにただひたすらなんか撮るだけ、というような状況。オートフォーカスが速いとか、暗くてもシャッターが切れるとか、そういう感動にも慣れた。慣れてしまった。それじゃあなんか、高い買い物もったいなくね?

デジタル一眼 そうじゃない、こうなの!

デジタル一眼 そうじゃない、こうなの!

 というわけで、やっぱり基礎の本くらい買おう、ということでこのムックを買った。いろいろ出ている「一眼入門」みたいなのを立ち読みして、これを選んだ。
 なぜだろうか? まず第一に、字が大きくて読みやすいからだ。次に、見開きで一コンテンツという構成がわかりやすいからだ。さらには、それほど用語解説とかに踏み込まず、サクっと具体的なことが書かれているように感じたからだ。
 まあ、それもそのはずというか、表紙にバッチリこう書いてある。「フィルム世代の目からウロコが落ちる!」と。すなわち、銀塩から流れてきたシニアを主眼においたムックなのである。だから、作例に孫を想定したと思われるものが多いのだ。俺がそのくらいの子供を熱心に撮っていたら、通報されるだろう。
 それはともかく、いろいろと勉強になった。想定読者ではないので、「おすすめのレンズ」的なことを言われても、ふざけんなどこにそんな金あんだよ、というところだが、それはともかくとして、だ。
 だいたい、今まで俺は写真の本とか読んだことがなかった。いや、あったかもしれないが、よく覚えていない。そういえば、カメラを買うにしても、写真雑誌のようなものを見たりはしなかったか。
 いくつか気になったところをメモしよう。あ、なんかすごい言い切りみたいなところばっかり引用したようになったけど、そんなに偏屈な本ではないと思う。どちらかというと、ポジティブで楽しい本だ。つーか、そもそも激しく主義主張やってるような入門本なんて買わないし。でも、まったくの意見なしじゃあないんだ。なんかこう、ちょっとあるんだ、そこんところのさじ加減が、こういう本で大切だと思う。いや、著者の阿部秀之さんがどんな人なのかようしらんけど。
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 フィルム時代の標準レンズはあきらめて、デジタル用を買いなさい!

 やっぱりなんかそんな気がしていた。ミノルタの古いレンズ、クソ重いしよくわかんない。いや、なにか使いどころはあるのかもしれないが、差がわかんないからべつにいい。

(さらに2本ミノルタのレンズ追加。あと自分で一本買ってこれで全部)

 もっとも、フィルム時代のレンズを使ってはいけないということではない。フレアによって軟らかな描写になっても、花や人物の撮影などには向いている。

 でも、そうなの。やっぱりなんかあんの? それじゃ、なんか使い勝手が意味不明だけど(たぶんスペックのなんとかで換算するとしょうもない望遠すぎる状態になんのかな?)マクロ面白いからAF MACRO 100mm F2.8だけはキープしておこう。標準のと、2週分の馬券の儲けで買った最低価格級の望遠と、このあたりで。
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RAWだから適当に撮ればいいよ、って、いいわけないんだ。こんなことを真顔で言う人がいるから、本当にガッカリしてしまう。(略)そもそも撮ってさえおけばいい程度で写した写真が、いい写真になっているはずがない。

 俺の中で、「高解像度のjpgだから適当に撮ればいいよ」みてえなところがあんのは前にも書いたとおりだが。だいたいにして、作例として「この写真は小さいから目立たないが、ダメなRAW現像の典型だ」って載っている作例見ても、暗めの画像が明るくなっててよくなってんじゃん、くらいにしか思えない。フォトレタッチ入門書だったら、作業前、作業後で通りそうな。
 まあ、この紙にこのサイズで印刷するレベルにおいては、というところだろうが。あるいは、俺程度の人間が見るレベルにおいては、というところか。つーか、俺はやっぱり下流DTPまわりの人間だから、このサイズあたりで考えてしまうんだよな。
 あ、ちなみに、べつに著者はRAW前提みたいなことは書いてなくて、JPGでもオーケーなので。
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 写真教室の生徒さんのプリントがいまいちなとき、「ちょっと、カメラ見せて」と言って設定を確認すると、なんでこんなところをいじってるのだろうと驚くことがある。彩度、コントラスト、シャープネスなどが、ドカーンと上げてあったりする。

画像の好みは、人種による要因が大きいという。日本人は、鮮やかで、メリハリがあって、シャープなのが好きなのだ。だから、ひどくなる。

 これはカメラの設定と、レタッチどっちについても述べていること。これは、よくわかる。俺がPhotoshopを使い始めたとき、こう、ヒストグラムの山の両脇の三角をこう、グイッ、グイッと寄せて、Kなんか左の三角をずずずいっと右に移動させて、「黒は黒だろ」みたいな、そんなえらくコントラストキツキツ補正してたわ。したら、印刷屋さんに「こういうのは出しにくいです」と諭されたりしたものだった。それで、ああそういうものなのかと、こう、自分では常識的にできるようになったと思うのだけれども、客観的には知らない。なにせPhotoshopもまともな教育受けてねえし。
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 この本で一番「それでいいのか」と思ったのは、ホワイトバランスの設定の話あたりで、あれはガンガン使っていいのか、とか、まあ、自分でもようわからんあたりがはっきりしたというか。
 あと、レタッチについても、レンズのゴミや道に落ちてるゴミ消してもいいみたいなこと書いてあって、それもはっきりしてよかった。いや、世の中にはいろいろな意見やスタンス、思想信条はあるだろうし、だいたいにして俺はカメラ使って何すんのかもわかってないけど、写真家の人が少なくともこう言ってるというのは、なんというか参考になる。
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写真はプリントしてなんぼなんだ。ハードディスクにいくら溜めたって偉くない。たくさんプリントした方がエラいんだ!

 そんで最後の章に「プリント」があって、その扉にこうあった。これはなんというか、そうかもしらん、という気にもなる。なんか考えてしまう。というのも、なんとなく俺も、ひょっとしたらそうかしらん、と思うところもあるからだ。
 むろん、俺にしたって、このブログみたいなものに、「こんなところ行きましたよ」、「こんなもの見ましたよ」というあたりで写真載せたいというところがとりあえずの目的だし、今やネットというものがあって、データだからこそ大勢に見せられるというところもある。プリントアウトしなくても充分プリントアウトというか、アウトプットというか、そういうところはある。
 が、なんかね、なんなんだね、このね、実感がない。ようわからんが、昔々、使い捨てカメラで撮って、小さなアルバムに入ってるやつのほうが、「俺が撮った写真」という気がする。やっぱり俺はまだ物質世代の人間なんだろうか、ともかくそうなのだ。
 というわけで、せっかく会社にプロラボの人も出入しているのだし、なんかちょっとプリントしみるかね? という気になった。なんかこれで、もっと大きく引き伸ばすか、とかやり始めたら面倒なことになるかもしらんが。
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 最後に、いちばんいいなって思ったところを紹介したい。

 写真は本当に好きなものを撮らない限り、絶対にうまくならない。みんなも撮るから、私も撮ろうではないんだ。本当に花が好きですか? 本当に風景写真が好きですか? もし、写真を撮らなくなっても、それでも見に行きたいですか?

……そして、自分の好きなものに対して、もう一歩踏み込んで撮ってもらいたい。客観的でなく、第三者でなく、自分がどう好きかを見せてほしい。小さなことでいい。それがあるから自分の写真になるんだよ。

関連リンク

 この著者によるα100の使用レポートみたいなの。勉強になる。