俺は夏の大三角形の見分けかたを知らない。北斗七星の見方もわからない。ただひとつわかるのがオリオン座だ。オリオンの三つ星だ。その結果、俺のオリオン座は三つ星を中心としたひどく大きな星座となって、冬の夜空に君臨している。
オリオンの名のつくものはすばらしい。ロッテオリオンズ、オリオンビール、「弁護士は不要、死刑を希望する!」、「世界革命の第一歩として作戦を実行した」、……「自爆してオリオンの三ツ星になるつもりだった」。
トウショウオリオンも美しい響きの馬である。
しかし、なんといってもオリオンザサンクスが最高に美しいと思うのである。キャニオンロマンがいて、ゴールドヘッドがいた。そして、オリオンザサンクスがいた。俺の中で、この三頭は特別なところにいて、たとえトーシンブリザードでも、かなわないのだ。インテリパワー、アローセプテンバー、サプライズパワー、ドラールアラビアン、あのころの大井。
そんなことを思い出しながら、カメラをくっつけた三脚を片手に夜道を歩いた。三脚の使い方はよくわからない。ただ、適当にセットして、バリアングルのモニタを傾け、有線リモコンでシャッターを押すというのは悪くない。スナップと違って、なにかきちんとした仕掛けと作為があって、それを淡々と実行しているというような、そのような心持ちになるからだ。