……要するに、ネギだ。

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ビデオ・ゲームにすっかり脳みそを持ってかれちまって、まったく言葉が出てこない。一枚の写真からなにか語り始めようかと思っても無駄なことだ。花の名前はアリウム……アリウム ‘シルバースプリング’( Allium 'Silver Spring' )……要するに、ネギだ。そしておれは蝶の名前を知らない。アオスジアゲハか。

おれはすごくチープな短銃を片手に……。密林でガラゴロと旧式のカノン砲を引きずって……適当な方向にぶっ放す。轟音、ものすごい反動。粘土質の土にヒビが入る。弾の行方は……知ったこっちゃない。

「おれは」と書き始めると、いくらかは言葉が出てくる。だが、ジェシーだったらどうだろう? そもそもジェシーってのは男か? 女か? 男だ。

ジェシーは、相当にチープな電動ノコギリを片手に……。密林でバックギャモンのチャンピオンをバラバラにしている最中だった。びちゃびちゃと血が流れた。汗まみれになったジェシーは、割にあわない仕事を請け負った自分を罵った。電動ノコギリの歯はすぐにだめになったし、ときどき止まっちまう。密林はアホみたいに暑い。気がつくと蝶が集まってくる。血を吸いに集まる。ジェシーはたかってくる蝶を片手で振り払う。ジェシーは密林でバックギャモンのチャンピオンをバラバラにするようなやつではあるが、蝶を両手で叩き潰したりするようなやつじゃなかったのだ。

仕事を終えたジェシーは血に染まってガタガタになった電動ノコギリを森の中に投げ捨てた。森のなかを歩いて行くと、毬のような花を見た。ジェシーは知らなかったが……要するにそいつはネギだった。

そして、バックギャモンのチャンピオンの胴体におれの放った砲弾の弾着まであと5秒。

4秒。

3秒。

2秒。

1秒。

ぼかーん。