いまさらながら『第9地区』を観る

第9地区 [Blu-ray]

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 アニメ『天体のメソッド』で唐突に空に現れる謎の大円盤というのを見て、ああおれは『第9地区』を観ていなかったと思ったのは嘘だけれども、今さらながらに『第9地区』を観たのでメモしよう。
 所はヨハネスブルグ、突如現れた大円盤型宇宙船。なんにもコンタクトをこないので、ヘリで近づいてドリルで穴開けてみたら、中にはエビ怪人みたいな難民たちが詰まってた。仕方ないので円盤の下に難民キャンプみたいなのを作った。20年経った。ナイジェリア人のギャングが入り込んで武器のやりとりをしたり、どうもエビの素行が悪くない。地域住民たちが立ち退き要求圧力が強くなって、砂漠の中に第10地区を作ることになる。そこで、宇宙エビ難民たちの管理委託を任されている民間軍事企業の課長みたいのが、エビの立退き通告をすることになる。
 面白いのは「これから起こる事件」を回顧するようなフェイク・ドキュメンタリー調の導入、あるいは、社内記録用映像、ニュース番組、監視カメラ映像などがバランスよく、そして自然に物語を組み込んでいて、うまいことこの世界に夢中にさせてくれることだ。
 「この世界」。そりゃまあ南アフリカが舞台なのだからアパルトヘイトを思わせずにはいられない。言うまでもなく「差別」が大きなテーマになっている。その中で、企業の課長みたいのが、これが本当に主人公なのにマッチョでもなんでもないんだけど、それがどう立ち回っていくか。さらに、ある行動で自分がエビ怪人化していき、被差別側に立ってどう世界が変わっていくか。そのあたり、あまり崇高でも英雄的でもない。「え、そこで裏切るか」という一発もやらかす。やらかすのに、最終的にはパワードスーツでダネルNTW-20(20mm対物ライフル)と戦うことを選ぶ。追い詰められてのこととはいえ、そこで戦うことを選ぶところが、なんというか人間の、宇宙の希望というところだ。最初からダンディじゃないが、最後はダンディじゃんよ、ということだ。
 SFアクションとしても……宇宙人の武器とかパワードスーツとか、そのあたりの破壊力はいい感じだったな。いや、あんな強力な武器があったら、なんで地球人に虐げられたまんまなの? とかいう疑問もある。というか、宇宙人側の事情についてはほとんど情報がない。おそらく指導層が居なくなってしまったのではないか、と劇中で評論家が推察しているくらいだ。
 これはこれでありだ。それに、だいたい異星人とのコンタクトものといえば『幼年期の終り』のオーバーロード様のような感じになり、「野蛮な地球人」ということになるわけだけど、あえて逆を突くのは珍しい……かどうかはわからんが、興味深いifではある。だからといって、超強力兵器と大好きな猫缶を交換してしまうあたりは……まあエビ宇宙人の考えることはわからん、そもそも人間同士も文化が違えば話がわからんのに、星が違えばさらに文化が違うってもんだろう。まあ、たとえば難民になった宇宙人は、彼らの世界での奴隷階層でなんらかの去勢的処置(卵産んでたから性的な意味でなく)がとられていて、反抗心や攻撃性がそもそも奪われていたとか……想像するのも悪くはないか(けど、最後攻撃しとったよな、盛大に)。
 ま、いろいろあるが、「やっぱり世間で評判になっていたものはおもしれえなあ」というところで満足できた。そんなとこ。