あんたは『第五の季節』を読む

 

これは、世界の終わりの物語―数百年ごとに“第五の季節”と呼ばれる破局的な天変地異が勃発し、文明を滅ぼす歴史がくりかえされてきた超大陸。その世界には、地球と通じる能力を持つがゆえに虐げられる“オロジェン”と呼ばれる人々がいた。そんな中、あらたな“季節”が到来しようとしていた…。前人未踏、3年連続で三部作すべてがヒューゴー賞受賞。新時代の破滅SF。

あんたはSFをカート・ヴォネガットフィリップ・K・ディックから読み始めた。正確に『チャンピオンたちの朝食』と『ザップ・ガン』からだ。そのあとあんたは、SFオールタイムベスト的な作品を読んだ。ウィリアム・ギブスンの文体にはしびれた。

だが、その次は?

あんたはSF雑誌のこともよく知らない。だが、こんなことに気づいた。表紙か帯に「ヒューゴー賞」、「ネビュラ賞」と書いてあれば、そんなにはずれない。それに気づいたあんたは、さらにいくらかのSFを読んだ。

『第五の季節』も「ヒューゴー賞」受賞作品だ。しかも三部作で三連覇しているという。それは中山グランドジャンプを三連覇するよりすごいことか? あんたにはよくわからない。ただ、「普通でもすごいのに三倍すごい!」と単純に思うだけだ。

『第五の季節』は、まずプロローグで種まきをしたあと、三つの舞台で話が進む。同じ世界の話をしている。しかし、互いに交わってはいない。あんたは、これがいつ、どういう形で合流するのか気になる。そのうちの一つは二人称で書かれていて、あんたが今書いているのはその影響だ。

読みすすめるうちに、ちょっと勘のいいあんたはこんなふうに思う。「これはひょっとしたら●●差を利用している仕掛けなんじゃないのか」。幕間にほのめかされたのは明らかに■だろう、と。

あんたも人並みに本は読んできた。いくらかSFも読んできた。こんなファンタジー風SF、差別問題を取り扱ったSF、ジェンダー問題を意識させる作品も知らないわけじゃない。それでも、あんたは、これはなかなかに面白いと思う。やはり「ヒューゴー賞」は伊達じゃない。

そしてあんたは、それなり分厚い小説をひさびさに読み終える。読み終えて、あとがきと解説を読んで、やはりプロローグに立ち返る。そして思う。「ぜんぜん終わってねえ!」と。続きが出るのはいつなのか。ちょうど一年待つのか、待ち遠しく思う。すくなくとも、忘れないようにしようと思う。そして、いったいいつ『三体』を読むのか、ちょっと考えたりする。

 

goldhead.hatenablog.com

『第五の季節』も鉱物好き、石好きは満足するところがあるだろう。世界幻想文学大賞も目安になる賞だ。

 

goldhead.hatenablog.com

SFでは世界が終わることも少なくないが、こんな作品もあった。これも三部作だった。