日本のエースは、松坂大輔

松坂大輔、ストライクは「最後の最後で野球の神様がとらせてくれたのかな」 - プロ野球 : 日刊スポーツ

先発し、球速は最高118キロ。5球すべて直球だった。2球目、外角低めに決まった球が唯一のストライク。「正直ブルペンから投げていてもストライクが入るかどうか心配だったので、せめてものあの1球のストライクというのは、最後の最後で野球の神様が取らせてくれたのかなと今思っています」

おれは弟とこんな話をしたのを覚えている。「西武のエースは西口だけど、日本のエースは松坂だよな」。

西武ファンにとってそれが正しいかどうかわからない。ただ、おれにはそう思える時期があった。松坂は日本のエースだった。そして、メジャーのエースにもなった。なったけれど、投手人生の後半は怪我との戦いになった。今や、そのイメージのほうが強くなっているかもしれない。しかし、思い出そう、横浜高校時代のピッチングを、プロ野球デビューのときのピッチングを、メジャーでの、WBCでの……。

松坂大輔。おれにとってはレジェンドではない。同時代を遠くから仰ぎ見た存在だ。その存在が、ついに力尽きて現役を終えた。もし、松坂についてよく知らない世代が、投手生活の後半や晩年をもってして、そうでもない投手と言おうものなら、顔を真赤にして反論したい。

松坂は、怪物だった。日本球界が生んだ最強のエースだった。おれはそう言いたい。

おれは、縁あって横浜高校の文化祭に行ったことがある。そこには、松坂にまつわる記念碑のようなものがあった。まだ、松坂がバリバリ投げていたころだ。松坂は、そのようにして偉大なのだ。本人が、現役で投げつづけることに価値を見出していたとしても、やはりもう、レジェンドなのだ。そしてもう、そうなってしまった。

おれは凄烈な松坂の引退試合に、涙する。