俺たちの夏が聴こえたら

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俺たちの夏がラジオから聴こえたら、取るものも取らず、脇目もふらず、俺は海に向かってまっすぐ走っていくべきだった。そう思う20年前の夏。今のおれは髪を切りすぎて外に出たくない。染めていたのもすっかり黒くなってしまったし、あえて黒縁眼鏡にあごひげを長目にして怪しさを増している。そんなことは問題じゃない。髪が短ければ涼しいだろうと思ったら、汗がダイレクトに顔に流れてくる。雨を受け止めるダムとしての森林。それはそうと左耳にもピアスをつけようかと思うが、4つの穴の管理というと手に余る。ならばいっそおれはタトゥーを入れたい。図案はおれのアイコンでいいだろう。おれの太陽のアイコンでいいだろう。背中いっぱいに丸く入れるんだ。でも、タトゥーは痛そうだし、だいたいどこかタトゥーの店にいかなければいけない。怖いじゃないか、人と話すのは。DIYでできるものでもないし、Amazonで買えるわけでもない。人間欲張ってはいけない。Amazonで買えないものまで欲しがる強欲は捨て去らなければいけない。そして夏に向き合わなくてはならないのだ。まっすぐに走る。冬へと走りだそう。冬、ちがう。夏ってのは、わかってんのに全然意味なく家出たりするのだ。ぬるくなったモエもご愛嬌。明日こそライドオンタイム。結局一人の部屋インマイルーム。カセットもレコードもない俺はiPhoneに夏の曲ばかり集めて……去年かその前に作ったリストがある。何曲か増やす。年齢も一つ増す。なにかできることはなかったのか15年前の夏。それはそうと10年前の夏、なにもなかった夏。今年はどこか行こうかって毎日そわそわしているだけの夏。おれにはどこに行く金もない。仕事は暇で干上がりつつある。秒読みは始まっちまってる。呆けていられるのあと何年? 俺が死ぬのはきっと夏だ。冬に生まれた人間は凍え死なない。暑さにやられて死ぬのだ。そして、俺の嫌いな夏の腐敗物になる。俺は俺が死んだあとのことには無関心だ。好きに処分してほしい。そういえば夏の間、普通ごみの収集を一日増やすというのはやらなくなっちまったのかな、横浜市