黄金頭さん、高野山に参る(二日目)

承前。

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和歌山の朝は早い。

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もちろん開いていないわけだが、商店街にこういう場外馬券売り場もある。中央のも買えるようだ。

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台風が次の日か、その次の日に来るという。この日は朝から暑い。

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革命……読めない。

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これは読める。

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とても読める。どうでもいいが、和歌山には新宿歌舞伎町なみに無料案内所があった。案内する先がそんなにあるようにも見えなかったが……それでこそ案内が必要ということなのかもしれない。

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地元びとと合流。ふたたびのJR和歌山駅。ここから和歌山線とかいうのに乗って、橋本駅和歌山県)に行くとのことである。ところが、駅に入って、さらに乗り換え改札とかいうのが出てくる。よくわからないのでICカードでさらに入る。あれはなんだったのだろうと話していると、ベテラン風駅員が近づいてきて話しかけてきた。「どこまで行かれます?」、「橋本まで」。すると、そっちはICカードが使えないということを説明しされる。いったん自動改札を開け、誘導されるがままに階段を登り、精算機のようななにかをパパパっと操作して、言われるがままにICカードを入れて、出てきたのが上の「出場証」である。乗る前から精算するというよくわからない仕組みである。初見殺しである。それにしても、われわれの様子から、「この人らわかってないで入ってきたな」と見逃さなかった駅員さん、おそらく今までに何千人、いや、何万人もそういう人間の対処をしてきたに違いない。

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普通、奈良行き。たぶん、これに乗った、と思う。違うかもしれない。

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だんだん、電車は山の中に入っていく。夏の日、無人駅のホーム、ひまわり、あと、足りないのはなに? 青春のなにか。

それで、えーと写真がないのだけれど、橋本(和歌山県)で南海に乗り換え。「天空」という特別列車が停まっていて、駅員さんに「これって特急券とかいりますか?」と聞いたら、「自由席の方は乗れます」とのことだったので、すんなり乗り換える。南海の「サザン」と「天空」は前何両は有料指定席、後ろ何両かは特急券もいらない自由席、というスタイルのようだ。ちなみに、降りるときにちょっと「天空」の指定席見たけど、なかなかすごかったぜ。

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これは、極楽橋駅を降りたところだろうか。

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よい雰囲気。あほみたいに時間が余っていたら、外に出てみたかもしれない。

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とはいえ、極楽橋駅を降りた、と書いたがあまり正確ではない。そのままぞろぞろと南海の高野山ケーブルカーに行くのである。非常に混んでいた。時間にして5分。外もまったく見えなかったが。

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はい、高野山駅。ここから山道的なものを歩く方法もあるらしいが、バスで行くのがスタンダード。やはりゾロゾロと皆が行くようにバス停に並ぶ。バスが来る。一本行ったらまたすぐ来る……のだけれど、これはこの日、2019年8月13日においての話である。この日は、「高野山ろうそくまつり」というイベントが行われる日であって、バスが5分おきだか、随時だか運行されていたのである。普通の日の場合、本数はグッと減るようなので、事前に回るルートを決めておくべきだろう。

あと、バス料金。1日フリー乗車券というのが830円(おとな)で売っていて……売っていたらしく……、それを持っている人が多かった。どこで売っているのかはしらない。が、親切なおれが調べたところ、高野山駅前バス営業所というところで売っているらしい。

お得な乗車券 | 南海りんかんバス株式会社

いきなりゾロゾロとバスに向かってはいけないのだ。で、フリー乗車券の存在を知らぬわれわれ。バスはやはりICカードに対応しておらず、現金で払うかどうするかと運賃表を見る。すると、1,000円のバスカードというものがあると片隅に書いてある。支払いのときに運転手さんに言って買えばいいだろう。1,000円で1,360円分のお得なカードだ。……いや、だってさあ、高野山駅前で「お得な一日フリー乗車券をお買いもとめください!」とか言ってくれないんだもの。そりゃまあ、言ったら、なんかそういうのの束から出してくれましたし、使えましたけれども、5回くらい乗り降りしたときの4回くらいエラーが出るという始末で、はっきり言って「今は使われていないカード」なんだろうなというのが感想。みなさん、高野山をバスで巡る人は、「一日フリー乗車券」で。南海りんかんバスにかわっておれがアピールします。

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で、最初にどこに行くかといえば、奥の院。これである。おれは先日、横須賀の米軍祭りにオスプレイを見に行ったが、なんとなく後回しにしたら片付けられたあとだった、ということがあった。この日も「今日はおまつりだから奥の院片付けちゃいましたー」、ということがあるかもしれない。高野山に行って奥の院に行かなかった、では済まされないであろう。いきなりバスで一番奥の奥の院に行く。え、奥の院ってなに? それくらいお調べなさい。

で、奥の院にはバス停的に「奥の院口」というところから歩いていく「お時間のある方向き」コースと、「奥の院前」というバス停からの「お時間のない方向き」コースがある。後者を選んだ。おれは高野山に来るのは初めてだし、距離感がわからない。そんなに時間がないわけでもないけれど、帰りの特急、そして新幹線は逃せない。だから、スピード重視だ。スピード重視でいいのかという話だが、それでいいのだ南無大師遍照金剛。

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とかいいつつ、注意の貼り紙が気になったりもする。字を大きくする方法を、「!」マークの出し方を……。高野山でパソコン教室でもやろうかと思ったりした。

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しかし、やはり墓所なのでバシャバシャ写真撮るのもはばかれるかな、と。でも、この墓石については、写真業の先人たちを供養するものらしく、写真に撮ってもいいかな、などと思う。

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あとは、スギが太いな、でかいな、高いな、とか。

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それはともかくとして、お墓が沢山立ち並んでいる。すごく古いのから、ちょっと奇をてらったもの。名刺入れが備えられた、大きな会社のもの……名刺入れって、だれがお参りにきたかチェックするのだろうか。「あの取り引き先はぜんぜん来てないから切るか」とか。

で、そんななか、親鸞聖人のお墓があります、と。えー。

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まあ、なんだ、親鸞のお墓というものは一般的と言うか、浄土真宗的には大谷本廟というところになるのだろうが、「高野山ならなんでもあり」という感もあって、やはりここは日本仏教の源流なのであろう、などと思う。ちなみに法然の墓(いずれも墓碑とかいったほうが正確なのかもしれない)もすこし離れたところにあった。あと、上の写真は上の上の写真のすぐ上にあって、なぜかきれいに一円玉だけがお供えされていたのだけれど、親鸞の墓もうちょっと、もうちょっと上ですので。

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化粧をするとなにかいいことがあるらしいなにか。

……と、このあと奥の院奥の院の手前に橋がかけられていて、いろいろな注意書きがある。その中に、撮影禁止というのもあって、写真はない。脱帽とあったので、帽子も脱いだ。なんか空気がピリピリするな……ということもあるような、ないような。南無大師遍照金剛、南無大師遍照金剛。

ご挨拶を済ませ、お守りなどを扱っているところへ。ここは日本でも一番の霊場なのだから、ここのお守りは無敵だろうと思って一つ求める。窓口の女性が、俗世離れしたような雰囲気で、さすが高野山、それも奥の院、と思う。

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俗世……。ここは聖地なのか霊場なのか特別な場所なのか。特別な場所である。天皇にまつわる場所でもある。とはいえ、そこを訪れる人々は、おれはなんなのか。ほとんどの人が、俗の人であって、俗のままの装い、俗のままのおしゃべりをしながら、俗のままに歩く。聖俗分けがたき場所。いや、それが日本仏教の、いや、日本という国の極みであるやもしれぬ。

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記憶が曖昧で本を出すのが面倒だから記憶を頼りに書くと、写真家の藤原新也が『全東洋写真』の最後、いろいろのアジアの国の最後に訪れたのが、高野山の宿坊だったような気がする。藤原新也は『俗界富士』でもこのような日本の、日本人のあり方について書いていたような気がする。

全東洋写真 (フォト・ミュゼ)

全東洋写真 (フォト・ミュゼ)

 
俗界富士

俗界富士

 

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さて、またバス停に戻ろう。戻ってバスを待っていたら……雨が降ってきた。ぽつぽつから、しとしとくらいに、傘が欲しいくらいに。まさか台風? と思う。ともかく、次の目的地である金剛峯寺を訪れる。金剛峯寺。建物としてはそんなに古くないことなどを、入口前の案内板で知る。

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拝観料を支払い、見学。なかでお茶とお菓子をふるまわれる。しばらく座って休む。

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すると、雨が上がったどころか、ものすごく晴れていた。山の天気はかわりやすい、といっていいのだろうか。

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ばえる。

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こうやまきやさん。

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高野山大学にちょっとお邪魔する。あの銅像は……、あの人こそは……。

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だれ? いや、失礼な、アンベードカル博士ですよ!

ビームラーオ・アンベードカル - Wikipedia

あくまで聞いた話なので真相はしらないが、和歌山県の方で銅像の置き場に困り、よくわからないが高野山大学に回ってきて、学生なども誰なのかよくわかっていない、ということらしい。直接、高野山高野山大学に縁のある人ではない。でも、仏教で繋がっている。高野山の懐の深さよ、などと勝手に思う。100年くらい経ったら、もっといい感じに山に馴染むことだろう。

ちなみに、上のWikipediaのページ、2018年5月10日にすでにブックマークしていた。おそらく、「なぜインドで仏教が衰退したのだろうか」ということに興味を持っていた時期だと思う。

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しかし、高野山大学で青春を過ごすってのはどんな感じなんだろうな。あるいは、高野山小学校に通っていたら、とかな。小学校といえば、金剛峯寺の中で書道コンテストの作品展示みたいなのがあって、小学生の習字なんかもあったんだけど、賞をもらって飾られているなかで一番よかったのは「旧式の車」と書かれたやつだった。ほかにそんな文字を書いたやつはいなかった。

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これは最新式の車。おれは聞いてなかったけど、運転してる人が「これ恥ずかしいんだよな」みたいなことを同乗者に言っていたらしい。

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これはいずれ高野山銅像が建てられるかもしれない地元で尊敬されている人物。和歌山県民はみな智辯和歌山を誇りに思っているらしい。……とか言ってる神奈川県民のおれだが、こちらとて山下公園あたりに渡辺元智像が建てられる可能性がないとも言えない。

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そういえば、お昼も食べたのだった。食券式で、海外からのお客さんも販売機のタッチパネルを「English」表記にして普通に買っていた。おれはといえば、うどんか精進カレーかの二択で迷わずカレーじゃない方を選んだ。やはりうどんとかの汁は関西のが美味しい。うどんにもコシがあった。問題は……って、おれの問題なのだけれど、ライスボールをお箸でたべようとしたら、ノリが意外に強くて、米の崩壊を招いてしまった。半分くらいうどんの汁の中に入った。まああれだ、家系ラーメンの〆みたいなものだということにしておこう。外国人が見ていて「ああ食べるのがジャパニーズスタイル」と思うなら、それもよかろう。あと、暑い中歩いてきてビール、という選択肢もあったが、高野山だしな、という理由で諦めた。

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あとは、濱田屋さんという、もちろんおれは知らないけれど、ちょっと裏の方にある有名なお店で胡麻豆腐をいただいた。わさび醤油か和三盆かの二択で、後者を選んだ。

高野山 胡麻豆腐 濱田屋

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裏にはラーメン屋さんもあった。そりゃまあ、ラーメン屋さんくらいないとな。あと、スナックもあったっけ。

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薬屋さんもあった。「陀羅尼助」の旗が立っていた。ちょっと入った。中は普通の薬屋さんっぽい日用品なども売られていた。カウンターに「陀羅尼助丸」があった。

おれは、「これはなんの薬ですか?」と男性の店員に聞いた。胃薬とのことだった。「よく、おばあちゃんがダラニスケ、ダラニスケ言ってたんですよ。一つください」と言って、一箱買った。正確には母が小さいころ飲まされていた、という話だが、まあいいだろう。Wikipediaを読むと、「陀羅尼助」については弘法大師ではなく役行者が……といった話もあるらしい。日本人、空海役小角に頼りすぎ説。

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街中、こんなところにも「世界人類が平和でありますように」。剥がそうとしているところにお坊さんがきて、「いや、世界人類は平和な方がよろしいです」と止めたのでは? などと謎の妄想が脳裏をよぎる。

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時間に余裕ができたので、名前を忘れたお寺をお参りする。入口に中曽根大勲位の名前があった。

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苔、いいよね。

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さらに時間が余ったが、油断しすぎても帰りの電車がある。「ろうそくまつり」でどっと人が増えたりしたらどうなるものかわからない。というわけで、駅に向かう。

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……が、やはり早すぎるので、駅に一番近いバス停である「女人堂」で下車する。女人堂は、女人禁制の高野山の周りにいくつかあった施設で、高野山のぎりぎりのところで出家した女性が修行したり、そこまでお参りに来るといった場所らしい。

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つまりは、高野山の少し外、ということになる。この写真のちょっと向こうからは高野山だ。もちろん、明治5年に女人禁制ではなくなったのだけれど(仏教における女性、日本仏教における妻帯、このあたりは一つの大きなテーマかもしれない)。

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とはいえ、ここは人も少なく、なにか非常に落ち着ける場所だった。風なども涼しく、たまにバスが停まり、人が降りてきて、バスが去り……。

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そうだ、この道の先、駅の方向までは「バス専用道路」なのである。なのに、何台か間違って登っていって、帰ってくるのを見た。中に一台、「横浜」ナンバーの車があって、ヒッチハイクしようかと思ったが、こんなところで迷ってる人間が横浜まで帰れるとも思えない。ちなみに「バス専用道路」は『頭文字D』かよという曲がりくねった急坂で、そこをバス同士ですれ違う運転手さんすげえなと思わずにはいられない。

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それはそうと、女人堂あたりでかなり時間を潰した。帰り際に気づいたが、歩いて20分くらいコウヤマキ自生地散策ルートがあった。とはいえ、やはり知らんところで危険はおかせない。

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そんなんで、なんか満員のバスに乗って高野山駅へ。夜に行われる「ろうそくまつり」とは関係なく、やはり大勢の人が訪れるところなのだろう。というか、おれは有休をとっていたのだけれど、平日じゃんね。まあともかく「ろうそくまつり」のおかげでバスがガンガン走っているというありがたい状態だった。もう一度書くけれど、そうじゃない日はそれほど本数ないっぽいから、事前に緻密に調べておいたほうがいいと思う。歩けない広さではないけれど、高野山駅に帰るのならば、最後の最後はバスということになる(山道みたいなのはあるけどどのくらい歩くか想像できん)し。いや、自家用車で来る人も多いのかな。駐車場あるかしらんけど。

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高野山駅でまた少し時間をつぶす。新型車両に置き換わった経緯が記されたパネルに、面白い写真があった。これは……供養なのだろうか、祈りなのだろうか。

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帰りのケーブルカーはタイミングよく座れた。外も見ることができた。行きは周りが見えなかったけれど、かなりの角度、高さよね。ちょっと高所恐怖が出てきた。これ、ケーブルカーじゃなくてロープウェイだったら、完全におれビビってったね。

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そんでもって、今度は「こうや」で「なんば」まで。導き主の指示によって前日に指定席を押さえておいたのがよかった。構内には売り切れのアナウンスが流れていたのだ。

「こうや」は山の中をキィキィいいながら走った。山間をゆっくり走った。街に出てくるとスピードをあげた。高野山はどんどん遠くなっていった。

南海の、なんばの駅で最後の懸案であった551の豚まんを食べた。南海にはたくさんの551があった。

そこで同行者と別れ、おれは一人で御堂筋線に乗った。御堂筋線が地上に出たあたりで、とてもきれいな夕日が見えた。おれは無性にさみしくなった。

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さみしさは、新幹線の駅弁とビールで紛らわすしかないのさ。

でも、女人堂でひいたおみくじは大吉だったんだぜ。

だけど、こんなこと書いてあったっけな。

御先祖の善因によって幸福な運が開けて参ります有難いことです慈悲と精進とによって一層この幸運を押し進めて行きましょう酒に溺れると凶

 

以上。