新選組!の感想

 油小路の回。伊東甲子太郎は、倒幕派の集まりで元新選組を理由に、岩倉卿につまはじきにされる。そして、大久保にそそのかされて近藤暗殺を決意。暗殺を命じた斎藤一新選組に戻ろうとするのが露見すると、伊東は話を収めようと首領同士の会見を持ちかける。会見の場は近藤の別邸、伊東は懐に短刀を忍ばせて…という目論見。で、その後、近藤の命をかけた言葉で暗殺をやめる伊東。しかし、帰り道で跳ねっ返りの隊士にやられ、結局新選組御陵衛士の戦いに。そんな中、試衛館仲間である藤堂平助が命を落とす。
 ……ちょっとあらすじをメモしようとしたと思ったらこの長さ。ここは見せ場だから、二話に分けてもよかったんじゃないかな。伊東が死ぬまでで一話、油小路で一話、と。けど、話の繋がりとか新選組自体がせっぱ詰まってきた流れを表すには、このくらいがよかったかも。それに、主要人物が死にすぎて、変に間延びしてしまったかな、二話だと。
 というわけで、今回の主役人物は伊東と藤堂なわけだけど、どちらも印象的。冒頭、いつも自信満々の伊東がけちょんけちょんにされるシーンはよかったな。涼しげな顔がちらりと歪む。この役者の人は、本当にこの役にぴったりだと思う。この人が誠実な二枚目役で出てきても、もうそういう目で見られないような気がする。ちょっと残念だったのは暗殺シーン。語り伝えられるところによると、首に槍がブッ刺さったまま、刺客を一人返り討ちに。そんな大立ち回りを期待してたけど、クールな鉄拳のみであっさりやられてしまった。あんまり大暴れする伊東先生ではないか。
 一方、平助。板挟みになりながら苦しみ、最後は死に場を見つけて死んでいく。最期を決意するあたりの顔つき目つきの凄味が印象的。伊東先生とは違って、瞬く間に二人斬ってるしね。いろいろ新選組の小説なんかを読んだけど、ここまでしっかり藤堂平助という人物像がわかったのは、このドラマが初めてだった。
 あと、あらためて思ったのは永倉新八役の山口の存在感。ベテラン役者でも釀しだせないような雰囲気がある。雰囲気といえば病状悪化中の沖田総司を演じる藤原竜也。顔色悪くなりながら油小路に駆けつけようと隊士服に身を包む姿、何か妖しい美しさすらある。なんてのは言い過ぎか。
 というわけで、今回も最高に面白かった……とはいかない部分もあった。たとえば、伊東の暗殺は大石鍬次郎ら若い衆の独断となっている。また、平助に決定的となる一撃(とどめの一撃ではなくて)を加えるのは、死にかけた無名隊士だ。そこらあたり、何か覚悟の量が足りてないような気がするのだ(平助は無名隊士に斬りつけられた、と伝えられてるけど)。そういう部分の汚さというか、闇の部分も含めて新選組じゃないかって。いや、ひょっとして大石たちに土方が内々に指示を……ってそれを含ませるような描写もなかったか。
 その一方で、近藤勇がどんどん無敵超人みたいになってくる。清濁の濁の部分もなく、土方とは違ったおおらかさの部分も感じられない。このガチガチに硬直している感じが、最後、「大久保大和」になったとき解けるというような展開なんだろか。
 来週は狙撃話。これからどんどん新選組は人も減り、バラバラになっていく。