フジの競馬中継を見終えて、TVKの競馬中継を見て(東京の最終、オレハマッテルゼから買って二着のトールハンマーが抜けていたのは痛恨だった。三着、四着は抑えていたのに!)、さらにチャンネルを回していると、R-1のテロップとともにあべこうじが出てきた。R-1ぐらんぷりの存在は知っていたので、「番組宣伝番組かしら?」と思って番組表を見ると、これが本番の放送だった。こんな時間にやるのかと少々驚き。一億総お笑い批評家化している今、俺も感想の一つだって書いてみたくなるさ。順番は出てきた順のつもりだけれど、ちょっと違うかもしれない。
- あべこうじ
- テンションや滑舌、リズムはいいと思った。ただ、ネタが「あるある系」というのか、人間ウォッチング的な部分が多く、こういう評価の仕方をしていいのかわからないけれど「これならつぶやきシローでいいじゃん」と思ってしまった。
- 友近
- 友近の芸はゲタゲタ笑えるタイプのものではないと承知の上だが、いまいち面白くなかった。人物模写というか、「そういう人」へのなりきりならなりきりへ徹底するべきで、ボケの部分が無駄に大きいと、かえって持ち味であるリアルさが犧牲になってしまう。果たして、ソーセージを使ったペン立てや鳥居が必要だったのか、と思ってしまうのだ。もっと真面目にソーセージに向き合ってこそ、活きてくるのではないか?(俺は何様だろう?)
- ヒロシ
- スーツが光っていたのが面白かった。しかし、ネタはいまいちだった。「ヒロシです」の定番フレーズ以外を見るのは初めてだったが、どうやらこの場に賭けた一発だった模様。とはいえ、「どうすればモテるとですか?」(だっけ?)というスタンスというか立ち位置は普段の自虐ネタと一緒。ただ、「ヒロシです」ならばいろいろなひねりもできようが、「モテ」に話題を限定してしまっては、どうも幅が狭いように感じた。ここは「ヒロシです」やってほしかったな。ところで、「好きな映画は『時計じかけのオレンジ』と答えている」というネタがあったけれど、『時計じかけ〜』と答えるのが、モテの正解なのか不正解なのか、どちらとして提出されたものなのかいまいちわからなかった。
- ほっしゃん。
- のっけの‘オールキャベツ’は強引ながら、そのあとはよくできた言葉遊びに持ち込んだ。誰だったか審査員の言う通り、オチは引っ張りすぎだったと思うけれど、他はよかったと思う。それに、あんまり他の人もオチらしいオチを付けてはいないような。
- 中山功太
- 「居酒屋で語る三十歳でバイトもせず親元で暮らして麻雀とパチンコばかりしている奴」という設定の一人芝居。合間にストップモーションになり、「ヒアウィーゴ〜」と音楽とDJトークが入る部分は正直かなり好きなのだけれど、設定の方があまりにも活かせていなかったのが残念。この人のことは何も知らないけれど、ナレーションによればお坊ちゃん育ちだとか。そこらへんが出てしまったのか、あまりダメ人間を刺すネタになっていなかった。たとえば「女なんて星の数ほど〜」に対して「男だって星の数ほど〜」なんてとこ。上品すぎる。ここらへん素直に「童貞」という言葉でも出して刺すべきではなかったのか。最後の方の夢語りも唐突で、それへのツッコミも中途半端。演じようとするものが自虐にならないのならば(顔のつくりはよかったけれど)、そういった者への執拗な観察と、それを刺し殺す覚悟が必要ではなかろうか?(やはり俺は何様だろう?)
- 井上マー
- この人は尾崎信者に刺されたりしないのかな、と思った。終了後に息が上がるほどの絶叫は見ていて楽しかったし、ネタもなかなかよかった。
結果、ほっしゃん。の優勝で幕を閉じた。この俺は熱があったし競馬にも負けたという精神上の理由があるにせよ、全体的にあまり盛り上がったようには見えなかった。これで五百万ならM-1の価値って、みたいな。言い過ぎだろうか。ただ、二人見逃したけれども、マイナスの少ない人が勝った、みたいな感じで。
ただ、ピン芸人というと漫才師に比べれば層も薄いし、なかなかそのあたりは仕方ないかもしれない。それに、一人芸は成熟に時間がかかるのかもしれない。ケーシー高峰とか堺すすむの域である。いや、しかし、こういう風にネタを見られる番組は大歓迎だし、何だかんだ言って優勝決定の瞬間の緊張感もいい。これからもどんどんやってほしい。