そしてスズメは巣立っていった

 おととい現れた子スズメ、今朝エサ入れを回収したときには元気な姿が見えた。エサは減っているように見えた。エサを補充して、また差し入れておいた。このくらいの干渉はスズメにとってなんでもないだろう。そして、夕方になってしばらく鳴き声がしないことに気づいたので、ドアを開けてみたら気配がしない。這いつくばって奥の方を覗いたりしてもいなかった。スズメは巣立ったのだ。
 スズメは鳴いていれば鳴いているで気になったし、鳴かなければ鳴かないで気になった。しかし、いつまでもそこに居てもらっては困るし、早く巣立ってほしかったのはたしかなことだ。この小さな命の責任を負うのは辛い。
 ともかく、彼(ないし彼女)は一羽のスズメとして巣立って行った。関内の薄汚いビルで巣立ちの日々を送ったのだから、ここらあたりで暮らすには格好の訓練所だったかもしれない。もう君のことをどう想像しようと僕の自由だ。けれど、あまりに早く居なくなって、少し寂しいのだ、ほんの少し。