『コースト・ガード』監督/キム・ギドク

コースト・ガード [DVD]

 最初キム・ギドク観て、スゲーって盛り上がったときに予約したものがポツポツと届く。上にどんどん入れてって、優先順位は下がっているはずだけど、人気がないのかポツポツ届く。なんかそんなに同じ監督の映画ばっかり観るのもどうか、という気もある。けど、せっかくだから観る。例によって話は把握していない。
 冒頭から、軍隊の厳しい練習風景。「お、これはキム・ギドクの『シルミド』か?」と思う。監督自身が兵隊出身のはず。あの映画では「忠誠!」だったが、この映画では「必勝!」が挨拶(?)だな。よし、これはぴったりのネタだろうか。と、思いきや、話は狂気の方に逸れていって……。
 でも、『うつせみ』とか『サマリヤ』ほどはどっか行かなかったかもだ。ただ、最後の最後はちょっとどっか行っててらしいかもしれない。ただ、映像美というようなものはそれほどでもなく。なんとなく狂気を描く常識の埒内の印象。
 あらすじにある通り、隊員の一人がふざけて最警戒地区に入ったカップルの男を殺してしまうところから始まる。そこに至までも、隊員の性格や状況、また、カップル側との絡みなどいろいろと張ってあって、そのあたりはいい。しかし、それよりも、殺しっぷりがいい。自動小銃で撃ちまくったあと、さらに手榴弾でバラバラに。直前のリアルな腰使い(この監督は腰使いにこだわりがあるのか、『春夏秋冬、そして春』、『弓』)と相まって、ここまでやってこそ狂う、というところ。生ぬるくないぜ。
 しかし、これを韓国人が観たらどう考えるかはわからない。すぐそこに北の脅威がある一方で、日常生活と軍隊との温度差もある。もちろん日本にだってある問題かもしれないが、やはり同国人に何か訴えかける部分が大きくもあるだろう。ぜんぜん軍隊に優しくないが、一般大衆に肩入れしてもいない。他国人の目から観ると冷静だが、これを韓国の人間に投げつけるというのは、結構大層なことじゃねえかと想像するが。
 ところで主役はチャン・ドンゴン。なんか、名前は聞いたことがある。どうにも人の、俳優の顔と名前が覚えられない。ひょっとしたら『シルミド』の上官の一人と同じ人が出ていたかも知れないが、よくわからない。
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