さて、帰るか

立ち飲み屋の酔っぱらいの怒鳴り声、カラオケパブの歌声、水槽のポンプの音、エアコンがたまにチリチリいう、そしておれがキーを叩く。

聴こえるなかで一番小さい音に神経を傾けるべきだ、とは誰のなんの物言いだったか。

今、ファクシミリが唸った。

厚かましくも2015年の12月18日に生存している。生存を始めてから何年経ったのか、おれはもう曖昧にしている。どうでもいいことだからだ。恥ずかしながらまだ何年か生きるのだろうか、あるいは今年のうちに死んでしまうのだろうか。

2015年はキリがいい。とはいえおれは末尾が9の年に生まれたのだから、どうにもキリが悪い。

こんなことを考えるつもりでも、書くつもりでもなかった。とはいえ、なにも書くべきことが見つからない。腹が減って帰るのが億劫になっているだけだ。

スター・ウォーズ』の話をしようか? とはいえおれは『スター・ウォーズ』の一本でも通しで見たことがない。おれが物心ついたときには、少し古くさいSFという印象しかなかった。新劇場版が出たときには、「おれはよく知らないしな」と思った。これで終わりである。べつに損をしている、という気にはならない。

しかし君、『ギャラクシー・クエスト』は名作だから観ておきなさい。

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2008年のおれは「人生ベスト5に入る」とまで言っている。そんなことを言ったら……もうこれ以上は生きられないだろうに。

古い時計の秒針がカチコチいっている。おれは秒針のカチコチいうのが嫌いだ。スイープ運針を好む。あれの方が時間が流れているという感じがしていい。そして、突き詰めるとその絶え間ない流れも嘘っぽいという感じがするのもいい。

時の流れとはなんだろうね。

左腕にはめたセイコー5を見てみる。中途半端に秒針が回っている。こいつは自動巻きしかないから、何日か使ってないとサボって止まる。

人間は眠っているとき、死んでいるのとなにが違うのだろうか。

そういえば睡眠薬を変えた。ブロチゾラムからゾピクロンに変えた。ブロチゾラムの方が深い眠りを提供してくれるが、睡眠導入の切れ味が鈍り、翌朝の持ち越しばかり威力を発揮するようになってしまったからだ。

ゾピクロンは超短期型だ。ひさびさに飲んでみたらスッと眠れた。とはいえ、薬効が完全に切れる時間か知らぬが、朝5時くらいに目が覚める。おれの身体は睡眠を拒否しているのか。

眠らない身体を。

あるいは、哀しみのアブサンを。

今年の冬の寒さは殺しにくるほどの気概を感じない。

いいから殺しに来い。

おれは安物のヒーターと、家のない人みたいな重ね着で迎えうつからさ。